
三流営業マンの主人公タダシ(モデルは著者)が、Amwayのミーティングで、ダイレクトディストリビュータ(DD)から授かった知識「安心感と信頼」を武器に、道を切り開き、医療現場から頼られる営業マンに成長していく物語。37回シリーズ。

北区のオフィスは、
朝から電話の音が響いていた。
社員20名の小さな
医療機器メーカー。
その中で、
タダシはまだ
新人の空気をまとっていた。
商品知識の勉強を
始めて数ヶ月。
医療機器の構造や
治療の流れは少しずつ
理解できてきた。
営業しなくていい
安心感もあった。
しかし——
どこか物足りなさがあった。
(俺、営業マンなのに
営業しとらん)
そんな気持ちが
胸の奥にずっと残っていた。
ある日の午後、
社長に呼ばれた。
「タダシくん、
ちょっといい?」
社長室に入ると、
社長はコーヒーを飲みながら
笑っていた。
この会社の社長は、
豪快で、どこか
哲学者のような人だった。
「勉強、順調か?」
「はい。なんとか」
「そうか。じゃあ、
そろそろ営業の本質を
教えようか」
タダシは背筋を伸ばした。
社長はゆっくりと
椅子にもたれ、こう言った。
「うちの会社の営業マンが
売るべきものは、
医療機器じゃない」
タダシは思わず聞き返した。
「えっ?
医療機器じゃ
ないんですか?」
社長は笑った。
「まずは、顔を売れ。
医療機器はそのあとだ」
タダシは言葉の意味を
すぐには理解できなかった。
「顔ですか?」
「そう。医師は、
知らん営業マンからは買わん。
まず、お前という人間を知ってもらえ。
商品はそのあとでいい」
その言葉は、
タダシの胸にズシンと響いた。
(顔を売る?
俺みたいな三流営業マンが?)
社長は続けた。
「それからな、
儲けるって言葉の
語源を知っとるか?」
タダシは首を振った。
「信者だよ。
信じてもらえれば、
自然と儲かる。
信じてもらえん営業マンは、
何を売っても儲からん」
タダシは息を呑んだ。
(信じてもらう俺、
そんなことできるんじゃろうか)
社長はタダシの目をまっすぐ見た。
「タダシくん。
お前は広島の言葉が出るし、
雑な言い回しもある。
それで苦情も来た。
でもな、それは直せる弱さだ」
タダシは胸が熱くなった。
「営業は、人間関係の仕事だ。
人間関係が作れれば、
商品は勝手に売れる。
まずは顔を売れ。
それが営業の第一歩だ」
社長の言葉は、
タダシの心に深く刺さった。
(俺は、顔を売るところから
始めんといけんのか)
会社を出て、
大学病院へ向かう車の中で、
タダシは
社長の言葉を何度も思い返した。
- 「顔を売れ」
- 「信者が儲けを生む」
- 「人間関係が営業の本質」
病院の駐車場に着いたとき、
タダシは小さくつぶやいた。
「俺、まずは
顔を覚えてもらわんといけんのう」
その言葉は、決意というより、
まだ不安のほうが大きかった。
でも、確かに
心の奥で何かが動き始めていた。
この日、タダシはまだ知らない。
社長の言葉が、後に
- 人間関係の本質を理解する
大きなヒントになることを。
物語は、ゆっくりと、
しかし確実に進んでいた。







