物語シリーズ 安心の音 三重県の郊外。見渡す限りの田んぼの中に突如として現れる巨大な、改装してイオンモールになる前のジャスコがあった。その一角にある自転車専門店ソーリンの店長を務めるのが、鈴木れい子(37)である。「はい、い... 2026年5月8日 nobuyuki ouchi
物語シリーズ タクシー 三重県津市。日本一短い名前の市として知られるこの街で、時田剛(ときたつよし・37)は今日もタクシー会社の無線室にいた。「はい、時田です。津駅東口に1台ですね、5分で向かわせます」 配車係 ひっきりなし... 2026年5月1日 nobuyuki ouchi
物語シリーズ キャッチボール スーパーの自動ドアが開くたび、外の風がひゅうっと入り込んでくる。レジ横のビニール袋がふわりと揺れ、私のエプロンの裾も少しだけめくれ上がる。私はマユミ、三十五歳。このスーパーでレジ係のパートを始めて、も... 2026年2月22日 nobuyuki ouchi
物語シリーズ 聞いてるつもり⑤ 澄江と隆の出会いの物語。これは、聞いてるつもり物語の根っこになっている部分でした。澄江が、聞く達人になる前、まだ若くて、まだ不器用で、まだ誰かに聞いてほしいだけの女の子だった頃。そして、隆もまた、寡黙... 2026年2月15日 nobuyuki ouchi
物語シリーズ 聞いてるつもり④ 澄江が二十代で結婚した頃、夫の隆は、今と同じように寡黙な人だった。仕事から帰ってくると、靴を脱ぎ、黙って風呂に入り、夕飯を食べ、テレビをつけ、酒を飲む。その一連の動作に、ほとんど言葉はなかった。 寡黙... 2026年2月8日 nobuyuki ouchi
物語シリーズ 聞いてるつもり③ 澄江の若いころからの物語です。澄江が聞く達人になるまでには数々の出来事がありました。今回は、なにがあったのかをまとめました。 少女のころ 澄江がまだ小学生だった頃、家はいつも忙しかった。父は港で働き、... 2026年2月1日 nobuyuki ouchi
物語シリーズ 聞いてるつもり② 長崎の坂の町に、澄江が生まれたのは昭和三十年代のことだった。家の窓を開けると、海の匂いが風に乗って流れ込んでくる。幼い澄江は、その匂いが好きだった。家は決して裕福ではなかった。父は港で働き、母は内職を... 2026年1月29日 nobuyuki ouchi
物語シリーズ 聞いてるつもり① 海の匂いがする坂の町を、悠斗はランドセルを揺らしながら歩いていた。小学三年生の彼は、今日も胸の中に話したいことをいっぱい詰め込んで帰ってくる。玄関の扉を開けると、家の中に夕飯の匂いが広がっていた。 聞... 2026年1月22日 nobuyuki ouchi
物語シリーズ タダシ③ 成人したタロウはすでに22歳、ジロウは20歳になっていた。子どもたちはそれぞれの生活を送り、家の中は以前にも増して静かになった。その静けさの中で、私の心には、ずっと喉の奥に引っかかったままの小骨のよう... 2025年12月1日 nobuyuki ouchi
物語シリーズ タダシ② 家事に育児に、夫の最適化理論に振り回されながらも、笑って泣いて乗り越えてきた20年。主人公・たみが綴るのは、ちょっとズレてるけど憎めない夫・タダシと、元気いっぱいの息子たちとの日々。おにぎりの形に悩み... 2025年11月29日 nobuyuki ouchi
物語シリーズ タダシ① この場をお借りして。タダシとのこれまでのことを書いてみました。子どもたちのおかげでやってこれたのかもしれません。そして、これからも。 スーツ 玄関に立つおじさん、私のパートナー。 タダシはIT企業に勤... 2025年11月22日 nobuyuki ouchi
物語シリーズ 遠距離の結末 西武新宿線沿線、航空公園駅から自転車で12分。ミツコの住むワンルームマンションは、防衛医科大学校の巨大な建物を仰ぎ見るような場所にありました。 江古田ランデブーは満員電車を越えて 「よし、眉毛よし。左... 2025年7月8日 nobuyuki ouchi