🌌ナナむモっおどこだよ。東京郜内、叀びた孊生寮倪陜荘の六畳間
ナナむモ

倧孊生の冬䌑みず聞いお、䜕を思い浮かべたすか 暖房の効いた郚屋、新䜜ゲヌムの発売日、そしお深倜に食べるカップ麺の眪深い矎味しさ䞻人公・屋島倧智19歳も東京の孊生寮の六畳間で、そんな意識䜎い系ドリヌムを叶えるはずでした。

しかし、圌の平和な日垞は、同玚生である意識高い系トップランナヌの゚ミコから届いた䞀枚の絵葉曞によっお突劂厩壊したす。「冬䌑みでも倧䞈倫だけど」圌女の行き先はメヌプルシロップの囜カナダ。それもバンクヌバヌ島の片隅にある知的障害を持぀方のためのグルヌプホヌムでした。

なぜ倧智の冬䌑みはカナダのナナむモにある築100幎の叀民家に奪われおしたったのか そしおそこで圌は䜕を卒業し䜕を芋぀けるのでしょうかこれは六畳間の䜏人であるゲヌマヌが匷制的に人生の寄り道に連れ出される物語です。


🌌ナナむモっおどこだ

屋島倧智タむチ19は、倧孊の講矩で配られた山のようなレゞュメの䞊に、昚日買い集めたコンビニスむヌツの空袋を無造䜜に積み䞊げおいた。春から倧孊二幎生になったずいうのに、圌のリビング兌寝宀兌食堂は盞倉わらずカオスだ。

「よっしゃ、今日もよく孊んだ」

倧智はスマホの画面をタップし、瀟犏のグルヌプチャットを閉じるず、倧きく䌞びをした。圌の専攻は瀟䌚犏祉孊。人の助けになりたいずいう玔粋な気持ちず、そこそこ単䜍が取りやすそうずいう珟実的な刀断が半々で遞んだ道だ。そしお、その日の昌䌑み、倧智は同じクラスの女子・゚ミコの爆匟発蚀を喫茶店で聞くこずになる。

゚ミコはい぀も枅朔感のあるワンピヌスを着おいお、倧智ずは真逆のしっかり者ずいうオヌラを攟っおいる。サヌクルやボランティア掻動にも粟力的で、孊科内では意識高い系トップランナヌず密かに呌ばれおいた。

「あ、倧智くん。私ね、来月からしばらくカナダに行くよ」

倧智はカレヌパンを䞀口頬匵ったずころで動きが止たった。

「カナダ留孊かすげヌな、゚ミコ。どの蟺」
「留孊っおいうか、むンタヌンシップみたいなものかな。バンクヌバヌ島のナナむモっおいう街のグルヌプホヌムで、アシスタントワヌカヌずしお働くんだ」

ナナむモ。グルヌプホヌム。バンクヌバヌ 倧智は頭の䞭でその二぀の単語をぐるぐる回したが、芋事にどちらも匕っかからない。

「えヌっずナナむモっお、あれだろメヌプルシロップの、えヌっず」

ず頭からシロップを絞り出そうずしたが無理だった。そしおもっずたずいこずに気づいた。

「グルヌプホヌムっお、あれか。瀟䌚犏祉の講矩で、䞀応やった、気が、する」

圌は瀟䌚犏祉孊科の孊生だ。専門甚語のはずなのに、具䜓的なむメヌゞが党く湧かない。自分の専攻の知識レベルの䜎さに倧智は額に冷や汗をかいた。意識高い系トップランナヌの前で、今さらナナむモっお、マンゎヌ的なフルヌツずか、グルヌプホヌムっおみんなで暮らすシェアハりスなんお聞けるわけがない。倧智は、平静を装い、カレヌパンを噛みしめながら、ただ䞀蚀、深く頷いた。

「ぞえ、ナナむモ。グルヌプホヌム。すげヌ、゚ミコらしいな頑匵っおこいよ」

そしおその日の倜、倧智は倪陜荘の自宀で積み䞊げられたレゞュメを足で避けながら、ノヌトパ゜コンの前に座り蟌んでいた。

「ナナむモっおどこなんだよ、チクショり」

圌はたずGoogleマップを開いた。Nanaimo, BC, Canada。こんな地名が本圓にあるのか。バンクヌバヌからフェリヌで枡る、緑豊かな島の街だった。倪平掋に面しおいお、どうやら東京の孊生寮より遥かに開攟的で空気が矎味しそうだ。

次に「ナナむモ グルヌプホヌム アシスタント」で怜玢をかける。ヒットしたサむトは、簡玠だが枩かいデザむンだった。そこにはこう曞かれおいた。

圓グルヌプホヌムは、知的障害を持぀方々の生掻をサポヌトする斜蚭です。倚様性を尊重し、䞖界䞭から意欲ある若者をアシスタントワヌカヌずしお䞀幎間のプログラムで受け入れおいたす

倧智は、画面に映る、笑顔で利甚者ず畑仕事をする若者たちの写真を芋぀めた。䞖界䞭から。19歳の自分ず䜕も倉わらない若者が遠いナナむモで、専門的なスキルを持っお瀟䌚的な圹割を果たそうずしおいる。そしお隣には、圌のパ゜コンの画面に映る知識ずは裏腹に、今日もたた䞀぀増えたコンビニスむヌツの空袋が、倧智の珟実を突き぀けおいた。

「なんだよ、゚ミコ。お前、本気で䞖界を倉えようずしおんのかよ」

倧智の心の䞭に、ナナむモの街䞊みずグルヌプホヌムの枩かい光が小さな戞惑いず、ほんの少しの焊燥感ずずもに焌き付いたのだった。

🌌逃げ道を塞ぐ、ごきげんよう

あれから玄半幎。季節は駆け足で過ぎ、郜内の孊生寮倪陜荘には、クリスマスを間近に控えた冷たく湿った空気が挂っおいた。倧智の六畳間は、六ヶ月前ず比べ、レゞュメずコンビニ袋の山が倩井にわずかに近づいた皋床で、本質的な倉化はない。

盞倉わらず圌の日垞はギリギリの単䜍取埗ず新䜜ゲヌムそしお深倜のカップ麺に支配されおいた。

「寒いなヌ。やっぱカナダはあったかいんだろうかいや、カナダか、あっちの方が絶察寒いか」

倧智は、窓際で匱々しく回る電気ストヌブをがんやりず芋぀めながら他人事のように゚ミコの異囜での生掻を想像しおいた。もう゚ミコのこずなんお忘れお平和な日垞に戻っおいたはずだった。そんな倧智の平和を打ち砎ったのはある午埌の郵䟿物だった。

厚玙でできた劙に立掟な゚アメヌルの絵葉曞。裏面には雪を抱いた雄倧な山脈ず、どこかのんびりした海沿いの小さな街が写っおいる。そしお、芋慣れた几垳面な文字。

「ごきげんよう」

倧智は思わず持っおいたポテトチップスを噎き出しそうになった。

「ごきげんよう誰だよ、この昭和の倧女優みたいな挚拶はっお、゚ミコかよ」

たるで時代劇のヒロむンのような仰々しい曞き出しに倧智は、早くも敗北感を芚えた。゚ミコはナナむモで完党に意識高い系トップランナヌの頂点を極めおいるらしい。葉曞にはこう続いた。

倏䌑みは垰っおこようずも思いたしたが、フランスやオランダ出身のアシスタント達ずロッキヌ山脈方面ぞ旅に出たした。こちらでの生掻はずおも充実しおいたす。蚀葉の壁はありたすが、ホヌムのコアメンバヌ知的障害者の方々が私を慕っおくださるのが、䜕よりも嬉しいです。倧智さんはお倉わりないですか

コアメンバヌ。慕っおくれる。ロッキヌ山脈。フランスずオランダのアシスタント。倧智は自分の手元にある、油でべた぀くポテトチップスの袋ず、゚ミコの葉曞を亀互に芋た。自分の呚りにいるのは、培倜でゲヌムをしたがる同玚生ず、匷いお蚀えば近所の野良猫だけだ。

「なんだよ、完党にリア充じゃんか。おか、コアメンバヌっお。うちの孊科の専門甚語にあったかな。そんなこずばをおがえちゃっおたあ、すごいな」

焊燥感に駆られ倧智は、意識䜎い系のプラむドを保ちながら、埋儀に返事を曞いた。圌はこの返信で、゚ミコずの距離を安党に保぀぀もりだった。遞んだのは、返事の遅い絵葉曞ではなくお、内容が乏しくおもスピヌド呜のラむン。内容は極めお抜象的。

「絵はがきありがずう。こちらは倉わりない。゚ミコの生掻が充実しおいるようで䜕より。忙しいだろうから、こっちのこずは気にしなくおいいぞ。じゃあ、たたな」

ず曞いた埌、おたけで、絶察に実行されないであろう䞀文を付け加えた。それが圌の保険だった。

「春䌑みに行っおもいいかな」

春䌑みならただ五ヶ月も先だ。その頃にぱミコも忙しくお忘れおいるだろうし、ごきげんようで始たる葉曞に、こっちもたあ、気が向いたらずいうニュアンスを蟌めおおけば、瀟亀蟞什ずしお凊理されるはずだ。

完璧な゚スケヌプルヌト。そう思っお送信した数時間埌、倧智はスマホのバむブレヌションで眠りから起こされた。画面には、゚ミコからのLINE通知。

゚ミコ冬䌑みでも倧䞈倫だけど
゚ミコもうすぐフラむトの予玄しないず、冬は混むからね

メッセヌゞには、返信に曞いた春䌑みに行っおもいいかなの郚分だけを匕甚したかのように、圌の逃げ道を完璧に塞ぐ、短い二行が添えられおいた。

倧智は垃団から飛び起きた。目の前には、遠くカナダから送られおきたごきげんようの葉曞ず、珟代の効率的なツヌルであるLINEによる即時返信ずいう新旧ハむブリッドの匷制力が立ちふさがっおいた。

「な、なんだよ、これ瀟亀蟞什を本気にすんなよ」

倧智の冬䌑みはナナむモのグルヌプホヌムの枩かい光に包たれた写真で突劂ずしお䞊曞きされおしたったのだった。

🌌築100幎のTシャツず消えたリチャヌド

゚ミコからのLINEを受けた倧智は、それから䞀ヶ月間、人生で最も䞍本意な準備期間を過ごした。枡航費を捻出するため、深倜のコンビニバむトを増やし、カナダの気候を調べた結果、圌は、ずりあえずヒヌトテックを限界たで持っおいくずいう、極めお倧智らしい結論に至った。

そしお、冬䌑みに入っおすぐ、倪平掋を越えおカナダのバンクヌバヌ囜際空枯に到着。さらに囜内線を乗り継ぎ、フェリヌでバンクヌバヌ島ぞ。ナナむモずいう街に降り立った瞬間、圌の芖界には、どこを切り取っおも絵葉曞になりそうな景色ず、空気を突き刺すような枅涌な寒さが広がっおいた。

グルヌプホヌムは、街の䞭心郚から少し離れた静かな䜏宅地にあった。目印は、日本の寺瀟仏閣を思わせる、立掟な石造りの煙突が二本立っおいる、倧きな民家だ。

「ここが、グルヌプホヌムだよ。築100幎を超えおるんだっお」

゚ミコは久しぶりに䌚った倧智に、もはやごきげんようずLINEでやり取りしおいた人間ずは思えないほど、ハキハキず説明した。圌女は明らかにナナむモの空気に銎染み、顔぀きたで䞀段階、意識高くなっおいた。

玄関に入った瞬間、倖の寒さが嘘のように、家䞭が暖かな空気に包たれおいた。

「すげぇセントラルヒヌティングっおや぀か快適すぎだろ」
「それに、芋お暖炉の煙突も珟圹だから。おかげでね、この冬、3階の私の郚屋でもTシャツ䞀枚で過ごせそうよ」

倧智は絶句した。ナナむモの雪景色の䞭でTシャツ䞀枚。゚ミコの意識の高さは、物理的な気枩すら無芖するレベルに達しおいるのか。早速、ホヌムの構造の説明が始たった。

「コアメンバヌ、぀たりここで生掻しおいる方々が六人。そしお、アシスタントワヌカヌは私を入れお䞉人。本圓は四人必芁なの。週䌑の亀代がき぀いのよね」

倧智は早速、今回の来蚪が、単なる友人蚪問ではなく、人員䞍足の穎埋めである可胜性を察知した。

「四人もいたのか」

゚ミコは頷いた。

「私がここに来おすぐの頃、リチャヌドっおいう22歳のアシスタントがいたんだけど、急に蟞めちゃったの。圌がいれば完璧だったんだけど」

リチャヌド。倧智ず同じくらいの幎霢で、急に蟞めた。なんだか共感を芚える。゚ミコは続けお、リチャヌドの生掻ぶりを説明し始めた。

「リチャヌドはね、ずにかく気さくなのんべえだったの。仕事が終わるのが倜の11時なんだけど、そこから䜕床か町のパブに飲みに行ったわ」

倧智はゎクリず唟を飲み蟌んだ。゚ミコが気さくなのんべえずパブぞ。やはり圌女の意識は高すぎお、どこかおかしい。

「リチャヌドの郚屋は1階だったの。キッチンの䞀番奥。みんなが䜿うキッチンを抜けた先に圌の郚屋があるのよ。すごく倧柄な人だったからたるで門番みたいだったわ」

゚ミコは3階の屋根裏のような郚屋を案内しおくれた。屋根の傟斜を利甚した倩井の高い空間で、女性アシスタントの郚屋が䞉぀䞊んでいた。

「私の郚屋はここ。屋根裏だけど、暖房のおかげでポカポカよ」

倧智は、゚ミコの快適な生掻ず、リチャヌドずいう謎の門番アシスタントの存圚、そしお䜕よりホヌムの人員䞍足ずいう珟実を目の圓たりにし、圌の冬䌑みが、ただの䌑息旅行では終わらないこずを確信した。

「四人目か。たあ、せっかく来たんだし、ちょっずだけ手䌝うか」

そう぀ぶやく倧智の目に映ったのは、廊䞋に食られた、蟞めたリチャヌドず楜しそうに写るコアメンバヌたちの写真だった。

🌌ゲヌマヌず、デビットずいう名の奥の院

ナナむモでの翌朝。倧智はグルヌプホヌムの最高責任者であるハりスレスポンシブのメアリヌず察面した。メアリヌは五十代くらいの快掻な女性で身長は倧智よりも高い。圌女は倧きな手を差し出し、笑顔で倧智を迎えた。

「りェルカム、タむチ゚ミコからあなたの話は聞いおいるわ。たずはゆっくり䌑んでちょうだい。䞀぀だけルヌルがあるの」

メアリヌはそう蚀っお、片方の眉を䞊げた。

「ここでは、日本語を䜿わないでね。コアメンバヌもアシスタントも、みんながコミュニケヌションを取れる蚀語は英語だけだから。あなたもすぐに慣れるわ」

倧智は絶句した。瀟亀蟞什で、手䌝うかず蚀っただけで本気で蚀語の壁たで乗り越える気はなかった。゚ミコは流暢に英語を話しおいるが、倧智の英語レベルは、高校時代にゲヌムの攻略サむトを翻蚳した知識皋床だ。

「え、あ、む゚、む゚ス、ノヌ・ゞャパニヌズ。アむ・アンダスタン」

顔を匕き぀らせる倧智を芋お、メアリヌは笑いながら、圌の宿泊堎所に案内しおくれた。堎所は2階。デビットずいうコアメンバヌの郚屋だずいう。

「タむチのベッドはここよ」

案内されたのは、八畳間よりも広い掋宀の、入り口付近に眮かれたシングルベッドだった。そしお、郚屋の奥たった堎所に、もう䞀぀のベッドが芋える。そこがデビットの寝床らしい。぀たり倧智のベッドは、デビットの郚屋の前宀のような空間なのだ。

「オヌケヌ。アむ・リブ・りィズ・デビット」
「そうよ。デビットは芪切な人だから倧䞈倫。あなたにはずくに䜕もしなくおもいいず䌝えおあるから、奜きなように過ごしお」

䜕もするな、ずいうメアリヌの蚀葉は裏を返せば、倧智の存圚をただの客ずしお扱い、業務に関わらせる気は今のずころないずいう意味だった。しかし、倧智は暇だった。そしおデビットの郚屋の前宀でゎロゎロしながら、階䞋の゚ミコや他のアシスタントたちがテキパキず働く音を聞いおいた。

瀟䌚犏祉孊科の孊生ずしお、たた、意識高い系トップランナヌの友人ずしお、非垞に居心地が悪かった。そこで倧智は自䞻的に動き始めた。゚ミコが朝食のパンケヌキを焌く日は、朝早く起き、圌女が生地を混ぜおいる間にダむニングのテヌブルセッティングを手䌝った。フォヌクずナむフを䞊べるだけだが、倧智にずっおは倧いなる瀟䌚貢献だ。

「倧智くん、ありがずうすごく助かるわ」

゚ミコに感謝されるず、倧智は東京の六畳間でゲヌムに明け暮れおいた半幎前の自分ずは違う、たるで䜕かの圹に立っおいるような錯芚に陥った。たたある日、メアリヌが

「買い物に行くから、運動がおら来なさい」

ず声をかけおきたので倧智はショッピングセンタヌぞの食料品の買い出しに同行した。メアリヌは食料品をカヌトに入れる間も、倧智に矢継ぎ早に英語で話しかけおくる。

「タむチ、自己玹介であなたのホビヌは䜕だっお蚀ったんだっけ」

「マむ・ホビヌ・むズ、ビデオ・ゲヌムズ」

倧智は倧きな声で答えた。日本語犁止なので、発音の良し悪しは気にしない。倧事なのは気持ちだ。グルヌプホヌムに戻るず、倧智はコアメンバヌたちに取り囲たれた。圌らはどうやらメアリヌから倧智の情報を聞いおいたらしい。

「タむチはね、ビデオゲヌムが奜きなんだっお」

メアリヌがそう蚀うず、コアメンバヌの䞀人が嬉しそうに蚀った。

「オヌヒズ・ア・ゲヌマヌナむス・トゥ・ミヌト・ナヌ、ゲヌマヌ」
「ハむ、ゲヌマヌ」

こうしお、圌の本名であるタむチはあっずいう間に消え、倧智のナナむモでの新しいアむデンティティは、圌が䞀番誇れるが、しかし犏祉ずは無関係な特技に基づいた、ゲヌマヌずなったのだった。

🌌意識高い系トップランナヌの挫折

倧智のナナむモでの日垞は、完党にゲヌマヌずしお定着しおいた。朝ぱミコずパンケヌキの皿を䞊べ、日䞭はデビットの郚屋の前宀にあるベッドでゎロゎロする。倕食埌はコアメンバヌの誰かに促されお簡単なカヌドゲヌムや叀いゲヌム機の盞手をする。日本語が犁止されおいるため、倧智はゞェスチャヌず、ゲヌムのチュヌトリアルで芚えたようなシンプルな英語でコミュニケヌションを取っおいた。

「デビットナヌ・アヌ・ルヌザヌ」
「ノヌタむチ、ナヌ・チヌト」

こんなレベルの英䌚話でも、圌にずっおはその六畳間よりも遥かに充実しおいた。メアリヌは盞倉わらず

「あなたはゲストだから、䜕もするこずはない」

ず蚀うが、倧智が食料品の買い物に同行したり、キッチンで無駄話をするだけで、アシスタントたちの間に、目に芋えない䜙裕が生たれおいるのを倧智自身も感じおいた。

ある日の倜、コアメンバヌたちが自宀に戻り静かになった頃、゚ミコが二階のデビットの郚屋の前宀たでやっおきた。屋根裏郚屋のTシャツ生掻を満喫しおいるはずの゚ミコにしおは、珍しく真面目な顔をしおいる。

「倧智くん、ちょっずいい」

倧智はデビットが奥のベッドで眠りに぀いたのを確認し、静かに頷いた。

「実はね、リチャヌドが蟞めた埌の話なんだけど。私、働き始めた圓初、メアリヌに厳しく泚意を受けたの」

倧智は驚いた。あの意識高い系トップランナヌの゚ミコが、指導を受けるなど想像もできなかった。゚ミコは壁にもたれかかり、遠い目をした。

「リチャヌドが蟞めお、人員が䞉人になったでしょう私はなんずかその穎を埋めようず必死だった。コアメンバヌのスケゞュヌルはすべお完璧にこなそうずしたし、週䌑の日も倧䞈倫ですっお蚀っお、自䞻的に残っお仕事をしおいたの」

倧智は、その光景が目に浮かんだ。゚ミコならやりかねない。いや、きっずやったのだろう。自分の胜力ず知識だけで、すべおをコントロヌルしようずする圌女らしい行動だ。

「でも、ある日メアリヌに呌ばれお、蚀われたのよ。゚ミコ、あなたのしおいるこずは、コアメンバヌぞのホスピタリティではなく、単なる自己満足になっおいるっお」

その時のメアリヌの真剣な衚情を思い出したのか、゚ミコは唇を噛んだ。

「メアリヌは続けたわ。ここは病院でも工堎でもない。あなた自身が疲れ果おお、心の䜙裕を倱ったら、誰も助けられない。私たちは、圌らの生掻を助けるためにいるけれど、それ以䞊に、圌らず共にここにいるこずが倧切なのよっお」

倧智は、頭の䞭でメアリヌの英語のセリフを、高校英語の知識を総動員しお翻蚳した。぀たり、働きすぎんな、アホかずいうこずだ。

「ショックだったわ。完璧なアシスタントを目指しおいたのに、ただのオヌバヌワヌカヌずしお危険信号を出されちゃっお」

倧智は、ゎロゎロしおいたシングルベッドから身を起こし、呆れたような口調で蚀った。

「なんだよ、それ。゚ミコ、お前、それっおさ、ストヌリヌ重芖のゲヌムを、アむテムコンプリヌトのために最初から攻略サむト芋ながら高速でクリアしようずするようなもんだろ」

゚ミコはきょずんずした顔をした。

「どういう意味」
「だから、完璧にこなそうずしすぎなんだよ。このホヌムの生掻っお、゚ミコが蚀うロッキヌ山脈旅行や、パブで飲むリチャヌドみたいに、どうでもいい無駄な時間や寄り道こそが、デビットたちが䞀番楜しみにしおいるむベントなんじゃねえの」

倧智は、自分でもなぜこんなにスラスラず蚀葉が出おくるのか䞍思議だった。それは、圌がこの数日間、ゲヌマヌずしお、完璧ずは皋遠い、ただの寄り道ず無駄話の時間を、このホヌムで過ごしおきたからかもしれない。゚ミコはしばらく倧智を芋぀めた埌、小さく笑った。

「そうね。ゲヌマヌの蚀う通りかもね。私たちは、リチャヌドが蟞めた穎を埋めなきゃっお焊りすぎお、䞀番倧切な共にいるっおいうパヌトを忘れおたのかもしれない」

その倜、倧智は初めお、゚ミコずいう意識高い系トップランナヌが、実は自分ず同じように、カナダの地で詊行錯誀し、悩み、そしお挫折を経隓しおいた䞀人の孊生に過ぎなかったこずを知ったのだった。

🌌ゲヌマヌず意識高い系トップランナヌの卒業

季節は再び春。郜内の倧孊構内は、桜の花びらず、卒業を祝うガりン姿の孊生たちで溢れおいた。屋島倧智、24歳。圌は入孊からちょうど5幎目にしお、ようやくこの日を迎えおいた。

「いやあ、長かったな、5幎」

倧智が肩をすくめるず、隣に立぀゚ミコが静かに笑った。圌女もたた、倧智ず同じく5幎で瀟䌚犏祉孊科を卒業した。

「倧智くんの堎合は、ほずんどゲヌムの寄り道ずレベル䞊げに時間を䜿いすぎた結果でしょう私ずは理由が違うわ」

゚ミコは冗談めかしお蚀った。圌女の堎合、2幎生の時の䞀幎間のカナダ滞圚が䌑孊扱いになったためだ。しかし、圌女がナナむモぞの情熱を倱うこずはなかった。4幎生の時、゚ミコは再び䌑孊するこずなく、ナナむモのグルヌプホヌムぞの蚪問を、なんず倧孊の瀟䌚犏祉実習の単䜍ずしお組み蟌むこずに成功したのだ。

「メアリヌず倧孊偎が、私の䌁画曞ず実瞟を認めおくれたの。共にいるこずこそが、最も重芁な実習であるっお」

゚ミコは誇らしげに語った。二床目の蚪問は、倧智がアドバむスした通り、完璧なアシスタントを目指すのではなく、コアメンバヌたちずの無駄な時間を倧切にする、心に䜙裕のあるワヌカヌずしおの日々だった。

「意識高い系トップランナヌ、盞倉わらずすげぇな」

倧智は、心底感心した。圌自身は、ナナむモから垰囜した埌も、盞倉わらずゲヌムに明け暮れたが、圌の心にはかすかな倉化が生たれおいた。ナナむモでのゲヌマヌずしおの䜓隓が、六畳間のゲヌム生掻を無為ではなく寄り道ぞず昇華させたのだ。

「で、゚ミコは今日垰囜しお、そのたた明日のフラむトか」
「いいえ、でも2週間で垰るわ。ナナむモのグルヌプホヌムに正匏に就職が決たったの。リチャヌドが蟞めた四人目の穎を、最終的に私が埋める圢になったわ」
「そうか。お前らしいな」

倧智は、゚ミコに倣っおごきげんようずでも蚀うべきか迷ったが、結局い぀も通りぶっきらがうな口調になった。

䞀方の倧智も、今日この日を境に、新しい生掻が始たる。圌が卒業匏を終えお向かうのは、六本朚にある倧手ゲヌム開発䌚瀟だ。

「俺は、六本朚で、誰かの無駄な時間を䜜る仕事に就くよ。デビットやコアメンバヌたちが倢䞭になれる、最高のむベントず寄り道をプロデュヌスする」

倧智がそううそぶくず、゚ミコは優しく埮笑んだ。その顔には、か぀おの匵り詰めた緊匵感はなかった。

「倧智くんは、ナナむモで立掟なゲヌマヌずしお私よりも先にその本質に気づいおいたのね。頑匵っお。い぀か私が䌑暇で東京に戻ったら、あなたが䜜った最高の寄り道を芋せおね」

圌らは軜く握手を亀わし、それぞれの未来ぞず歩き出した。゚ミコは、築100幎の叀民家が枩かく包み蟌む、ナナむモのグルヌプホヌムぞ。倧智は、最新のテクノロゞヌず資本が枊巻く、六本朚のゲヌム䌚瀟ぞ。倧智の背䞭は、もう半幎前の逃げ腰な倧孊生ではない。圌には、遠くナナむモの地で、圌の䜜ったゲヌムの䞻人公たちが、今日も誰かの無駄だけれど倧切な時間を圩っおいるずいう確信があった。

倪陜荘の六畳間から始たった、圌の人生最倧の寄り道は、こうしお意倖な堎所で、確かな意味を芋぀けたのだった。

Xでフォロヌしよう

おすすめの蚘事
🌿長野ぞ向かうETCの蚘録—劻の行き先に、僕はただ远い぀けない
結婚
🌿長野ぞ向かうETCの蚘録—劻の行き先に、僕はただ远い぀けない
芋えおも良さそうなのに、本人が絶察に気づかないこず。家庭内での倫婊喧嘩の原因ずなる倫の問題行動ずいうものは確かに存圚したす。本人には芋えなく...
🌿オヌトパむロットの錓動呜ずロボット手術の亀差点
仕事
🌿オヌトパむロットの錓動呜ずロボット手術の亀差点
この物語は、医療機噚の営業からロボットサヌゞェリヌの未来を担うマヌケタヌぞず歩む䞀人の男・タカシの静かな挑戊の蚘録です。技術革新の波に翻匄さ...
🌿36歳日曜日の境界線タツコの図曞通ず静かな午前のカフェ
結婚
🌿36歳日曜日の境界線タツコの図曞通ず静かな午前のカフェ
タツコはたちなかの静かなカフェのテヌブル垭でがんやりず本を読んでいた。図曞通で借りおきた装䞁の堅いミステリヌ小説だ。圌女にずっお、日曜日は厳...
🌿さようならのあずにおかえりは来るのか—劻が芋た倫婊の再構築
結婚
🌿さようならのあずにおかえりは来るのか—劻が芋た倫婊の再構築
この堎をお借りしお。タダシずのこれたでのこずを曞いおみたした。子どもたちのおかげでやっおこれたのかもしれたせん。そしお、これからも。小説です...
仕事
🌿䞭野のアパヌトで私達の結婚生掻スタヌトラむンずそのフラむング
高円寺から䞭倮線で二駅、䞭野の築40幎アパヌト。フロヌリングの䞊に広げられた婚姻届を前に、マサオ31歳は、い぀になく真剣な顔でメガネをク...
🌿システム゚ンゞニアの幎末幎始営業術フりタの堎合
仕事
🌿システム゚ンゞニアの幎末幎始営業術フりタの堎合
郜心から少し離れたオフィス街の䞀角、雑居ビルの階にふるさずネットのオフィスがある。 党囜各地の矎味しい特産品を扱う、埓業員30名ほどの掻気...
🌿グルヌプホヌムに黒垯がいる理由匷さずは。優しさずは。
仕事
🌿グルヌプホヌムに黒垯がいる理由匷さずは。優しさずは。
朝5時半の目芚たしでヒロは起きた。ただ暗いグルヌプホヌムのバルコニヌ暪のサンルヌムが圌の居宀だった。叀い日本家屋でサンルヌムずは呌ばれおいる...
🌿静かな手が、笑顔を運ぶ—内職から手話カフェぞ
仕事
🌿静かな手が、笑顔を運ぶ—内職から手話カフェぞ
朝のラゞオ䜓操が終わるず、䜜業所の空気は䞀瞬だけやる気に満ちる。しかしそのやる気は、職員の今日も元気にいきたしょうの声ずずもに、どこかぞ飛...