高血圧の原因になる塩分をいかに減らすか、若いうちから心がけておくと良い習慣があります。今回はそのことについて、物語の中でお伝えいたします。その第2回目です。
隠れ塩分
朝。雄大が出勤準備をしていると、スマホが震えた。差出人:ルミ。
件名:【今日の隠れ塩分チェック】
(来た)恐る恐る開くと、そこには看護師の本気が詰まっていた。
《隠れ塩分チェックリスト(ルミ作)》
- コンビニおにぎり(明太子・鮭・昆布)→塩分2〜3g
- カップ味噌汁→1.5g
- 唐揚げ棒→1.2g
- ポテチ(のり塩)→1袋で1.3g
- 牛丼並盛→2.5g
- うどんのつゆ→3g
- コンビニのサンドイッチ→意外と1.5g
- 塩バターパン→名前の通りアウト
最後にこう書かれていた。
《雄大さん、今日も塩分の罠に気をつけてね♡—塩分番長ルミ》
(♡つけるな怖いんだよ)
雄大はコンビニに寄り、いつもの明太子おにぎりを手に取った。(2〜3g)裏面の栄養成分表示を見る。食塩相当量:2.2g
「マジか」
次に、唐揚げ棒。食塩相当量:1.2g
「俺、今まで何を食べて生きてきたんだ?」
さらに、ポテチ。食塩相当量:1.3g
(のり塩裏切ったな)
雄大は、商品棚の前でしばらく固まっていた。店員が心配そうに声をかけた。
「お客様。大丈夫ですか?」
「塩分が多すぎて」
「え?」
「いや、なんでもないです」
(俺、コンビニで何言ってんだ)
昼。取引先の近くにある定食屋「まんぷく亭」。雄大は焼き魚定食を頼んだ。焼き魚ならヘルシーだろうと思ったのだ。しかし、店主が持ってきたのは、サバの味噌煮(濃いめ)だった。
(味噌煮?)
店主が笑顔で言う。
「うちは味濃いのが売りだからね!」
(終わった)
雄大は恐る恐る一口食べた。
(うまいけどしょっぱい)
ユリの声が脳内で再生される。
《塩分はね、知らんうちに溜まるんよ》
(知らんうちに溜まってる!)
店主が聞いてきた。
「どうだい?うまいだろ?」
「はい(塩分が)」
「ご飯おかわり自由だよ!」
「いえ(塩分が)」
「味噌汁も飲んでね!」
「無理(塩分が)」
店主は不思議そうに首をかしげた。
午後。営業所に戻ると、同僚の三浦(40歳)が声をかけてきた。
「雄大、昼飯どうした?なんか顔色悪いぞ」
「塩分が」
「塩分?」
雄大は、ユリとルミの話を全部してしまった。三浦は爆笑した。
「お前、塩分で監視されてんの!?」
「監視じゃない見守りだ」
「いや、それ監視だろ」
そこへ、別の同僚・田中(35歳)が加わった。
「塩分の話?俺も最近血圧高くてさ」
三浦が言う。
「じゃあさ、今日から減塩部作らね?」
「減塩部?」
「そう。」
- ラーメンのスープ残す
- ポテチは週1
- 味噌汁は薄め
- 外食は塩分少なめって言う
「これだけ」
田中が言った。
「いいじゃん!俺も入る!」
雄大は驚いた。(仲間ができた?)三浦が言った。
「雄大、お前が部長な」
「え、俺!?」
「だって一番監視されてるし」
「それ理由になる!?」
その夜。雄大が帰宅すると、ユリが夕食を作っていた。
- 減塩味噌汁
- ほうれん草のおひたし
- 鶏むね肉のソテー(レモン風味)
- 納豆
雄大は思わず言った。
「なんか、健康的だね」
ユリは笑った。
「雄大が頑張ってるからね。私もできる範囲で協力するよ」
雄大は照れながら言った。
「ありがとう」
ユリはふと真顔になった。
「雄大、私ね、病棟で防げたはずの脳卒中を何度も見てきたの。家族が泣いてるのも、いっぱい見た。だから雄大には、そうなってほしくないんよ」
雄大は胸が熱くなった。
(ユリ)
ユリは続けた。
「完璧じゃなくていい。できる範囲でいい。でも、続けてほしい」
雄大は深くうなずいた。
「うん。続けるよ」
そのとき、ユリのスマホが震えた。差出人:ルミ。
《雄大さん、今日の塩分どうだった?》
ユリが笑った。
「ほら、ルミも応援してるよ」
(応援?いや、監視)
雄大は心の中でつぶやいた。(なんとかなるかな)長岡の夜は、静かに更けていった。
減塩部
朝。雄大がトースト(バターなし)をかじっていると、スマホが震えた。差出人:ルミ件名:【今日の塩分ミッション】
(また来た)
開くと、こう書かれていた。
《今日の塩分ミッション(ルミ作)》
- 外食したら「塩分少なめで」と言うこと→言うだけで塩分1〜2g減るよ!
- コンビニで減塩と書いてあるものを1つ買うこと→なんでもいい。味噌汁でも梅干しでも。
- 車にバナナを常備すること→カリウムで塩分を外に出す!
- 今日の夕食の写真を送ること(証拠)
最後にこう書かれていた。
《雄大さん、今日も塩分と戦ってね♡—塩分番長ルミ》
(♡つけるな怖いんだよ)ユリが横で笑っていた。
「雄大、今日も頑張ってね」
(俺、今日も監視されるのか)
その日、雄大は千葉方面へ出張だった。昼前、取引先の担当者・佐伯が言った。
「雄大さん、昼どうします?
この辺、海鮮が有名なんですよ」
(海鮮ヘルシー?)
佐伯が連れて行った店は、「漁師の味!塩だれ海鮮丼」
(塩だれ?)
店員が笑顔で言う。
「うちは塩だれが名物でして!ご飯が進む味ですよ!」
(進んじゃダメなんだよ)
雄大は恐る恐る食べた。
(うまいけどしょっぱい)
佐伯が言う。
「雄大さん、味濃いの好きでしょ?」
「いや、最近は薄味で」
「薄味!?どうしたんですか?」
「塩分が」
佐伯は爆笑した。
「また塩分か!」
(俺、塩分の人みたいになってる)
午後、営業所に戻ると、減塩部の三浦と田中が待ち構えていた。
三浦「雄大、今日の昼どうだった?」
雄大「塩だれ海鮮丼」
田中「塩だれ!?それ地雷じゃん!」
三浦「雄大、部長なんだから気をつけてよ!」
雄大「いや、俺いつ部長になったの!?」
三浦「今日から減塩部のスローガン作ろうぜ」
田中「いいね!例えば」
田中が、ホワイトボードに書いた。『スープは残す、命は残す』
雄大「重いよ!」
三浦が続けて書いた。『塩分は敵、カリウムは味方』
雄大「戦争か!?」
田中がさらに書いた。『ポテチは週1、のり塩は裏切る』
雄大「のり塩に恨みあるの!?」
三浦「雄大、今日から減塩部の部長挨拶考えてきて」
雄大「いや、だから俺いつ部長に!」
減塩部は、雄大の意思とは関係なく暴走していった。
夜。雄大が帰宅すると、ユリが真剣な顔をしていた。
「雄大ちょっと話がある」(え、なに?怖いんだけど)
ユリは深呼吸した。
「雄大、来月の健康診断。一緒に行こうと思ってる」
「え?」
「あなたの結果、私も一緒に聞きたい」
雄大は固まった。
(一緒に聞く?つまり逃げられない?)
ユリは続けた。
「雄大が頑張ってるの、ちゃんと見てるよ。でもね。結果を一緒に受け止めるのが夫婦だと思うんよ」
雄大は胸が熱くなった。
(ユリ)
しかし同時に、逃げ道が完全に塞がれたことも理解した。(俺、もう後戻りできないんだな)ユリは優しく笑った。
「大丈夫。できる範囲で続ければいいからね」
雄大は小さくうなずいた。(なんとかなるかな)そのとき、ユリのスマホが震えた。差出人:ルミ。
《雄大さん、今日の夕食の写真まだ?》
(なんとかならない気がしてきた)長岡の夜は、静かに更けていった。
夫婦の未来
健康診断の朝。雄大は、ユリと一緒に病院へ向かっていた。(ついに来た逃げられない日)ユリは横で笑っていた。
「雄大、そんなに緊張せんでいいよ」
「いやなんか、血圧計が俺を待ち構えてる気がして」
「血圧計は敵じゃないよ。敵は塩分よ」
(その塩分と戦ってるんだよ)受付を済ませ、雄大は血圧測定の部屋へ。
看護師「はい、腕を通してくださーい」
(頼む今日だけは)
機械が動き出す。ピッウィーン
雄大(心の声)(上が135以下であれ!いや、せめて140以下で!いや、もう150でも!)結果が表示された。
《138/86》
雄大「おおおおおお!」
看護師「おお、悪くないですね。前回より下がってますよ」
ユリが小さくガッツポーズした。
「雄大、頑張ったね」
雄大は泣きそうになった。(俺、やった?)
診断が終わり、雄大が営業所に戻ると、三浦と田中がクラッカーを鳴らした。
「雄大、血圧138おめでとう!」
「部長、よく頑張った!」
雄大「なんで知ってんの!?」
三浦「ユリさんからLINE来た」
雄大「ユリィィィィィ!」
田中「今日から減塩部・祝賀会やるぞ!」
雄大「祝賀会って何食べるの?」
三浦「もちろん」
三浦が袋を取り出した。『減塩せんべい(しょうゆ控えめ)』
田中「あと、カリウム補給にバナナ!」
雄大「地味すぎる祝賀会だな」
三浦「いいんだよ。俺たちは健康で祝うんだ」
雄大は笑った。(なんか、悪くないな)
夕方。雄大のスマホが震えた。差出人:ルミ。件名:【最終チェック】。
(最後の追撃か)開くと、こう書かれていた。
《雄大さんへ》
『血圧、下がってたね。ユリから聞いたよ。あなた、よく頑張った。でもね、塩分との戦いは今日で終わりじゃないよ。これからも、
- スープは残す
- 加工食品は控えめ
- カリウムは毎日1品
- 週1で血圧測る
これだけ続けてね。あなたが倒れたら、ユリが泣くから。—塩分番長ルミより』
雄大は、思わずスマホを胸に当てた。(ルミお前、いいやつだったんだな。いや、怖いけどいいやつ)
夜。雄大が帰宅すると、ユリが夕食を用意していた。
- 減塩味噌汁
- アボカドとトマトのサラダ(カリウム)
- 鶏むね肉のグリル
- 納豆(カリウム)
ユリは言った。
「雄大、今日の結果本当に嬉しかったよ」
「ありがとう。ユリのおかげだよ」
ユリは少し照れながら言った。
「私ね、雄大と、これからもずっと一緒にいたいんよ。だから健康でいてほしいだけ」
雄大は胸が熱くなった。
(ユリ)
ユリは続けた。
「完璧じゃなくていい。でも、今日みたいにちょっとだけ頑張るを続けてくれたら、それで十分よ」
雄大は深くうなずいた。
「うん。続けるよ。スープも残すし、バナナも食べるし、のり塩も週1にする」
ユリは笑った。
「週1は許す」
その夜。雄大は布団に入りながら思った。
(塩分ゼロは無理。でも、塩分まみれもダメ。ちょうどいい距離で付き合えばいいんだな)
ユリが隣で言った。
「雄大、今日もお疲れさま」
「ユリも夜勤続きで大変だろ。ありがとうな」
ユリは微笑んだ。
「これからも一緒に頑張ろうね」
雄大は小さくつぶやいた。
「なんとかなるわ」
長岡の夜風が、静かに窓を揺らした。
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