実務・支援・専門性

夜間中学

「ねえ、ひかる。今日、数学の授業で隣の席のひとがさ、いきなり、ワタシ、タカハシデスって言われて、変な汗かいたわ」夜間中学校の校門を軽トラで出たところの信号で、きみこは顔を覆った。「そりゃ、その人が頑張って覚えた日本語で自己紹介したんでしょ。...
物語シリーズ

心電図

県立病院の循環器内科に勤めるマサコは当時、27歳。県内の国立大学医学部を卒業し、初期臨床研修という荒波を乗り越え、そのままこの病院の循環器内科に残った。心臓を守る女医といえば聞こえはいいが、現実はもっぱら心電図とカテーテルに振り回される日々...
物語シリーズ

肩もみ

どうにもこうにも、十月の風というのは少し湿っぽくて、それでいて男の心を妙にソワソワさせる。マモル(30歳)は、目の前を歩くマサコ(28歳)の、姿勢の良い背中を見つめていた。一週間前の土曜日、映画館の暗がりのなかで、泥縄式にどうにかこうにか手...
物語シリーズ

いとこ

郷里、秋田市の片隅にある、年季の入った喫茶店。営業マンの俺(52歳・ただいま絶賛単身赴任中)は、頭を抱えて冷めかけたコーヒーを睨みつけていた。目の前に座る小学生からの同級生で飲み友の由美さんが、不思議そうに小首を傾げる。単身赴任「どうしたん...
日常・家族・エッセイ

パンジー

春のパンジー苗づくりから始まった、コータローとまゆみの一年。ふたりの小さな営みが、少しずつ地域に根を張り、やがて人生をともに歩む物語へと育っていきます。昭和の家庭養鶏を思わせる素朴な暮らし、品評会でのちょっと照れくさいプロポーズ、そして串カ...
物語シリーズ

社内ニート

都心から少し離れたオフィス街の一角、雑居ビルの4階にふるさとネットのオフィスがある。全国各地の美味しい特産品を扱う、従業員30名ほどの活気あふれる通販会社だ。クリスマス商戦の激務を終え、社内は静かな年越しムードに包まれていた。だが、この日ば...
物語シリーズ

減量

徳島市のマンション3階。朝の光がカーテンの隙間から差し込み、寺田義男(38)はベッドの上で深いため息をついた。「肥満気味、かぁ」昨日の健康診断の結果票が、枕元で妙に存在感を放っている。まるで「ほら、見てみぃ」と言わんばかりに。この記事では減...