産後の子育て休暇取得中のミク(37)・ケンタ(8)・タツキ(6)の物語をお届けします。温かい「声かけの工夫」が自然に身につくとうれしいです。
早くお風呂入りなさい!
ミクは夕方になると、つい言ってしまう言葉があった。
「早くお風呂入りなさい!」
その瞬間、ケンタはソファに沈み、タツキは床に転がり、まるで動かない選手権が始まる。
ミクはため息をつきながら、ふとケンタのランドセルから出てきたプリントを見る。
今日の授業で習った「ものの数え方」。
犬は1ぴき2ひき、うさぎは1わ2わ、電車は1りょう2りょう、車は1だい2だい、うまは1とう2とう。
タツキが得意げに言う。
「ママ、ぼくね、うまは、1ちゃく2ちゃくっていったらわらわれたんよ。楽しかったんよ」
その言葉を聞いた瞬間、ミクの中で何かがひらめいた。
「ケンタ、タツキ。あと何分でお風呂入れそう?」
ケンタは少し考えて言った。
「んー。3分!」
タツキは「ぼくは2分!」と胸を張る。
ミクは笑った。
「じゃあ、タイマー鳴ったら、よーいドンね」
タイマーが鳴ると、二人は競争する馬みたいに、1ちゃく2ちゃくを争いながら洗面所へ走っていった。
ミクは思わずつぶやく。
「命令じゃなくて、自分で決めると動くんだね」
何回言わせるの!の沼
翌日。
ケンタはブロック遊びに夢中で、タツキは折り紙でうさぎの耳の角度にこだわっていた。
ミクはまた言いそうになった。
「何回言わせるの!」
でも昨日の1ちゃく2ちゃく事件を思い出し、ぐっとこらえる。
「今の遊び、どこまでやったら終われる?」
ケンタはブロックを見て言った。
「この電車が駅に着いたら」
タツキは折り紙を見て言った。
「うさぎの耳がぴょんってなったら」
ミクは笑う。
「じゃあ、終わったら教えてね。ママ、ここで待ってるね」
しばらくすると、二人は自分からミクのところへ来た。
「できた!」
「ぴょんってした!」
ミクは心の中でガッツポーズ。
「終わりを自分で決めるって、すごい力なんだなぁ」
まだ入ってないの?の焦り
その日の夜。
ミクはまた焦ってしまい、つい言ってしまった。
「まだ入ってないの?」
ケンタはむくれ、タツキは床にぺたんと座り込む。
しまった、とミクは思う。
そこで言い直した。
「もう脱げてるじゃん。あと一歩だね」
ケンタは照れたように笑い、タツキは立ち上がる。
「じゃあ、ぼく先に入る!」
「ぼくも!」
その後、湯船でタツキがぽつりと言った。
「ぼく、前はママに怒られてばっかりだったよ」
ミクの胸がぎゅっとなる。
タツキの口調は、昔の自分の言い方そのままだった。
「タツキ、ごめんね。ママ、変わりたいんよ」
ケンタが湯船でぷかぷかしながら言った。
「ママ、今日の言い方は合格じゃね」
ミクは笑いながら涙が出そうになった。
「3人ぶん声かけてるだけで、満点なんだよね」
お風呂のあと、何して遊ぶ?
週末の夜。
ミクはまた言いそうになった。
「もう、遅いよ!」
でも、深呼吸して言い換えた。
「お風呂のあと、何して遊ぶ?」
ケンタは目を輝かせる。
「なぞなぞしたい!」
タツキは跳ねる。
「しりとり大会!」
二人は楽しみができたことで、すぐにお風呂へ向かった。
ミクは思う。
「うまくいかないのは、私のせいじゃなかった。気づいた今から変えればいいんだ」
その夜、3人は布団の上で、数え方クイズ大会をした。
ケンタが問題を出す。
「ネコはどう数えるでしょう!」
タツキが元気よく答える。
「1ぴき2ひき!」
ミクは笑いながら、子どもたちの成長を感じていた。
声かけが変わると、家の空気がこんなに軽くなる。
そしてミクはそっとつぶやく。
「今日も3人回した(もうひとり赤ちゃんがいたの、登場しなかったけど)。これだけで、満点だね」
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