プリン🍮④

プリン🍮④ 全記事
プリン🍮④

アイコが働き始めた雑貨店「コトリ堂」は、小さくて可愛い店だが、スタッフの個性が強すぎた。店長・サエコ(45)は、いつもテンションが高くて、声が大きい。「アイコちゃん、今日も可愛いねぇ! その笑顔、店の売上3%上がるよ!」

アイコ、新しい仲間と出会う

(3%って具体的)

アルバイトのユウト(19)は、やたらと落ち着いていて、アイコより人生経験がありそうな雰囲気。

「アイコさん、棚の上の箱は僕がやります。落ちてくると危ないので」

(ヒサシの棚事件、もうバレてる?)

そして常連客のマダム・フミエ(68)。毎日来る。毎日しゃべる。毎日、買わない。

「あなた、最近働き始めたの?あら、いいわねぇ。人生はね、動いた人から幸せになるのよ」

(買わないのに、名言だけ置いていく)

アイコは思った。

(この店、ヒサシがいたら絶対ツッコんでる)

ある日、アイコは接客でミスをした。

「こちら、ラッピングお願いします」

「はい!お任せください!」

しかし、アイコはラッピング用の紙ではなく、商品用の包装紙で包んでしまった。結果、プレゼントが店のロゴだらけのゴツい箱になった。お客さんは苦笑い。

「逆に目立っていいかもね」

店長サエコは爆笑した。

「アイコちゃん最高!こういうの、うちの店の名物にしよ!」

(いや、名物にしないで!)

でも、ユウトが優しくフォローした。

「大丈夫ですよ。僕も最初は値札つけたまま渡す事件やりましたから」

(この店、事件多いな)

ミスをして落ち込むアイコに、マダム・フミエが近づいてきた。

「あなた、泣きそうな顔してるわね」

「いえ、大丈夫です」

「大丈夫じゃない顔よ。でもね、泣きたい時は泣きなさい。泣いたら、プリン食べなさい」

アイコは驚いた。

「なんでプリン?」

「女はね、プリンで立ち直るのよ」

(ヒサシの生まれ変わり?)

フミエは続けた。

「あなた、誰かを失った顔をしてる。でもね、失った人は、あなたが笑うと喜ぶのよ」

アイコの胸がじんわり温かくなった。

(この人、ただの常連じゃない)

仕事終わり、スタッフルームでサエコが言った。

「アイコちゃん、今日も頑張ったね!ミスしてもいいのよ。うちの店、全員ミスしてるから!」

ユウトも笑った。

「僕なんて、昨日レジ閉め忘れましたし」

(それはダメでしょ)

でも、アイコは気づいた。

(この店なんか、ヒサシの家みたい)

ドタバタで、ちょっとポンコツで、でも温かい。

家に帰る途中、アイコはふと空を見上げた。

「ヒサシ、今日ね、私、ミスしたけど笑えたよ。あなたがいたら絶対ツッコんでたよね」

風がふわっと吹いた。まるでヒサシが「まぁ、なんとかなるって」と言っているようだった。

アイコは微笑んだ。家に帰って冷蔵庫を開けると、プリンが2つ。

「非常用は、今日はいらないかな」

アイコは1つだけ取り出して、ゆっくり食べた。

(新しい仲間ができた。新しい日常が始まった。ヒサシ、私ちゃんと前に進めてるよ)

その夜、アイコは久しぶりにぐっすり眠れた。

新企画

ある日、店長サエコが言った。

「アイコちゃん、来月の手作りフェアで、何か出してみない?」

「えっ、私がですか?」

「そうよ!アイコちゃん、センスいいし、お客さんにも人気あるし!」

ユウトも言った。

「アイコさんのラッピング、あれはあれで味がありますし」

「それ褒めてるの?」

でも、アイコは思った。(やってみようかな)ヒサシなら絶対こう言う。『やれやれ!失敗したら俺のせいにしろ!』

(いや、天国から責任取れないでしょ)そうツッコミながら、アイコは久しぶりにワクワクを感じた。アイコが選んだのは、小さなビーズアクセサリー。最初は不器用で、ビーズを床にばらまいたり、糸を絡ませたり。

「ヒサシ、これ絶対笑ってるでしょ」

でも、作っていると不思議と楽しい。

(あ、これ可愛いかも)
(この色、ヒサシが好きだったな)
(この形、あの人のネクタイに似てる)

気づけば、ヒサシとの思い出がアクセサリーの中に自然と溶け込んでいた。作業中、常連のフミエがやってきた。

「あなた、最近いい顔してるわね」

「そうですか?」

「ええ。人はね、何かを作ると前に進めるのよ。料理でも、アクセサリーでも、プリンでもね」

「プリンは作らないです」

「じゃあ食べなさい」

(この人、ヒサシの親戚?)

フミエは続けた。

「亡くした人のことを思いながら作ると、その人が作品の中に住むのよ」

アイコは胸が温かくなった。(ヒサシ、私のアクセサリーの中に住むの?狭くない?)

フェア当日

アイコのアクセサリーは、なんと、予想以上に売れた。

「これ可愛い!」「色の組み合わせが素敵」「なんか優しい雰囲気がするね」

サエコは大喜び。

「アイコちゃん!これ、ブランド化しようよ!アイコのプリン工房とか!」

「プリン関係ないですよね?」

ユウトが冷静に言った。

「プリンはやめた方がいいと思います」

(この店、やっぱり好きだな)

フェアが終わった帰り道。夕焼けがきれいだった。アイコは空に向かって言った。

「ヒサシ、今日ね、私、すごく楽しかったよ。あなたがいなくても、こんな日が来るんだね」

風がふわっと吹いた。まるでヒサシが『だろ?俺の嫁は最強なんだよ』と言っているようだった。アイコは微笑んだ。

「うん。でもね、あなたがいたから最強なんだよ」そして、アイコの人生はまたひとつ、静かに前へ動き出した。

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