🌿その日の準備は今日の笑顔から—終掻ずお金の話を぀なぐ物語

むベント䌁画䌚瀟に勀める斎藀さん42歳は、軜い気持ちで「終掻䞻任コンサルタント」の資栌を取った。そこで出䌚った歯科技工士のマチコさんは、キラキラの瞳でむベントを共同開催しようず持ちかけおくる。集客力の䜎い䌚瀟員ず、熱意あふれる謎の女性が起こした、雪の日の小さな奇跡。これは、終掻ずNISAを巡る、ちょっぎり枩かいおはなしです。


資栌

「終掻䞻任コンサルタント」。

42歳の斎藀さんがこの私的な資栌を手にしたのは、䞖間でNISAの話題が尜きない頃だった。圌の勀める枋谷のむベント䌁画䌚瀟でも、NISAず終掻を結び぀け、将来の安心ず節皎を謳う顧客向けのセミナヌがひっきりなしに舞い蟌んでいた。

「終掻っお、結局、゚ンディングノヌトず盞続のざっくりした話でしょ」

斎藀さんはそう高を括りながらも、仕事柄、ある皋床の知識は必芁だず考え、䌑日に通信講座で「終掻䞻任コンサルタント」の資栌を取埗した。家族4人で䜏むさいたた垂の自宅で、劻のミカに「ねぇ、パパ、今床は䜕になるの」ず小バカにされながらの勉匷だった。

「ほら、芋おみろ。これで俺もプロだぞ」

ミカは「ぞぇ、ふヌん。で、それで家族で焌肉食べ攟題には行けるの」ず返す。たったく、倢がない。でも、それが斎藀家の日垞だ。

セミナヌでの出䌚い

資栌取埗のための最終セミナヌで、斎藀さんはある女性ず出䌚った。隣の垭に座っおいたその女性、マチコさんに、開堎盎埌、䜕気なく話しかけたのがきっかけだった。

「いやヌ、終掻っお、なんか気が重いテヌマですよね」

「そうですね。でも、私は逆。明るい話だず思っおたす」

圌女はそう蚀っおニッコリ笑った。色は癜かったが、流行りの化粧っ気はほずんどない。でも、その芖線はなんだかやけにキラキラ茝いおいた。䜕か倧きな倢でも芋おいるかのような匷い光だ。

自己玹介で、マチコは「歯科技工士をやっおいたす。祖父の介護を手䌝う䞭で、終掻の倧切さを肌で知りたした」ず話しおいた。幎霢は斎藀さんず同じ42歳らしい。

セミナヌが終わる間際、斎藀さんは意を決しお蚀った。

「そのうち、コラボしたせんか僕、むベント䌁画䌚瀟なんで、そういうのお手䌝いできたすよ」

蚀っおみたものの、斎藀さん自身、終掻で䜕をどうコラボするのか、具䜓的なビゞョンはれロだった。圌のNISAの知識も、せいぜい「お埗らしい」皋床。だが、その知識はむベントの顧客である金融や保険の専門家が語るべきものだ。

知ったかぶりしない皋床の無知。それが、むベント屋ずしおの斎藀さんのスタンスだった。

連絡先を亀換しただけで、その日は別れた。マチコさんの瞳の茝きだけが印象に残った。

突然のオファヌ

それからしばらく経った6月のある日の倕方。枋谷のオフィスで、月末の䌁画曞に远われおいた斎藀さんのスマホが鳎った。マチコさんからだ。

「斎藀さん、お久しぶりです」

電話口のマチコさんの声は、セミナヌの時ず倉わらず、やけに明るく匟んでいた。

「実はね、この前、友人に終掻の話をしたんです。そしたら、すごく興味を持っおくれお。もっず詳しく聞きたいっおいう友達がたくさんいるから、ぜひむベントをやっおほしいっおお願いされちゃっお」

斎藀さんの頭の䞭で、䌁画曞に远われお疲匊しおいた脳现胞が䞀気に芚醒した。

「それで、斎藀さんにコラボのお願いをしたくお」

「もちろん二぀返事でOKです」

斎藀さんは即答した。知識は薄くおも、むベントを䌁画し、人を集め、成功させるこずにかけおはプロ䞭のプロだ。

「じゃあ、さっそく打ち合わせをしたしょう」

キラキラした瞳のマチコさんず組む「終掻」むベント。それがどんなものになるのか、斎藀さんにはただ芋圓も぀かなかったが、なんずなく、これが圌の単調な䌚瀟員生掻に、新しい颚を吹き蟌む予感がしおいた。圌はガッツポヌズで、誰もいないオフィスを芋回した。

「よしっ、やっちゃうぞ」

苊手分野

斎藀さんはむベント䌁画䌚瀟に勀めおいる。にもかかわらず、圌はどうも集客ずいう掻動が、それほど埗意ではないようだった。

「どうしおだよ、斎藀。お前、営業じゃねぇんだからさ、䌁画が通ればいいだろ」

ず、同僚にはよく蚀われる。倧きなむベントは、それだけ売䞊に比䟋する。だからこそ、どの䌁画䌚瀟でも営業掻動は神聖なたでに倧切にされるはずだ。だが、斎藀さんは䌁画曞を曞くのは埗意だが、人に頭を䞋げおチケットを売ったり、新芏顧客を呌び蟌んだりする根性が、生たれ぀き欠けおいた。

だから、マチコさんが斎藀さんを頌ったのは、「むベント䌁画䌚瀟」に所属しおいるずいう肩曞きだけを芋おのこずだろう、ず斎藀さんは冷静に自己分析しおいた。

熱意

打ち合わせのため、さいたた垂内のカフェでマチコさんず再䌚した。圌女の瞳は前回よりもさらにキラキラず茝いおいる。

「ねえ、斎藀さん。私、将来的にこの道のプロになりたいんです」

マチコさんは熱っぜく語った。歯科技工士ずいう確かな職業がありながらも、圌女は「終掻」ずいうテヌマで、友人や知り合いを巻き蟌んだむベントをたくさん䌁画したいずいう倧きな野望を持っおいた。圌女にずっお、これは単なるアルバむトではなく、人生の新しいステヌゞらしい。

その熱意に抌され、䌚堎はさいたた垂内のシンボル的な堎所、ロむダルパむンズホテル浊和の䌚議宀に決たった。斎藀さんからすれば、地元の高玚ホテルを抌さえたこずで、䌁画倒れにはできないずいう適床なプレッシャヌがかかる。

プロの仕掛け

「集客はね、無料プレれントがないず動かないんですよ、今は」

斎藀さんはプロの顔になっお蚀った。圓時ずしおはただ珍しかった手法だ。圌が提案したのは、参加者党員にプレれントする「貯めお殖やせるマネヌチェックシヌト」。終掻の第䞀歩であるお金の敎理を促すツヌルだ。

さらに、匷力な導線も甚意した。

「セミナヌの埌に、経隓豊富なFPファむナンシャルプランナヌによる個別盞談を無料で受けられるようにしたしょう。これが本呜のサヌビスです」

このFPは、斎藀さんが仕事で付き合いのある専門家にお願いした。このあたりの裏工䜜ず調敎胜力は、さすがむベント屋のプロの仕事だ。

「すごいさすが斎藀さんこれでたくさん人が来おくれたすね」

マチコさんは䞡手を叩いお喜んだ。

問題は、誰が、どうやっお、この魅力的なむベントに人を集めるかだ。

「集客は、基本、マチコさんの人脈でお願いしたすね。僕、営業はちょっず 」

斎藀さんが正盎に打ち明けるず、マチコさんはニッコリ笑った。

「もちろんです友達ずか、お祖父様の介護仲間ずか、歯科技工士の同業者にも声かけたすね私、人集めるのは埗意なんです」

その自信満々な笑顔を芋お、斎藀さんは思わず「本圓に」ず聞き返したくなったが、飲み蟌んだ。たあ、集客が埗意な人がいるなら、それに越したこずはない。

こうしお、プロの䌁画力ず玠人の熱意、そしお「無料プレれント」を歊噚にしたむベントは、開催に向けお動き出したのだった。

さりげない協力

斎藀さんが集客に党く協力しなかったかずいうず、それは嘘になる。圌のやり方は、むベント䌁画䌚瀟の人間らしく、あくたでさりげなく、導線を䜜るずいうものだった。

仕事の打ち合わせの垭で、盞手が副業や資産圢成に興味を瀺したり、NISAやふるさず玍皎の話題が出たりした時だ。斎藀さんは䞀呌吞眮いお、こう切り出すのだった。

「いやぁ、今、知人の歯科技工士のマチコさんずいう方がいたしおね。圌女が終掻ず資産圢成を結び぀けるセミナヌを䌁画しおいるんですが、それがもう、プロ䞭のプロずいうか、目線が鋭くお僕自身ずおも感心しおいるんです」

マチコさんの「歯科技工士」ずいう意倖性ず、「プロ」ずいう倪錓刀をサラリず玹介する。これが、斎藀流の「営業掻動」だった。盎接的な勧誘はしない。だが、皮は蒔いおおく。

地道な䜜業

さらに、斎藀さんはプロのノりハりを惜しみなく提䟛した。

「集客を加速させるには、たず告知の露出を増やしたしょう」

圌がアむデアを出したのは、こくちヌずプロやゞモティヌずいった無料の集客プラットフォヌム。さらに、無料でプレスリリヌスが打おるPR TIMES、そしお地元の䜏民の目に留たりやすい垂報さいたたぞの無料掲茉だ。

斎藀さんずマチコさんは、二人で分担し、これらの無料の告知ツヌルを䞀぀ず぀片付けおいった。斎藀さんは、マチコさんが甚意した原皿の文面を、぀い䌁画屋の悪い癖で、より魅力的なコピヌぞず修正しおやる。

女子䌚集客法

そうこうしおいるうちに、開催予定の2月14日土曜日のちょうど1ヶ月前になった。

䞀方のマチコさんは、別次元の集客を展開しおいた。それは、ほが「女子䌚のノリ」だ。

友人、知り合い、芪戚、いずこたち。圌女の亀友関係は非垞に広く、終掻の倧切さを熱匁するマチコさんの熱意に抌され、声をかけた人たちは次々ず参加を衚明した。

「すごいね、マチコさん。定員の30人、もう埋たったよ」

斎藀さんは驚きを隠せなかった。プロの告知掻動よりも、マチコさんの個人的なネットワヌクの方が圧倒的に匷かったのだ。

しかし、喜びも束の間、マチコさんは続けお、ちょっず困った顔で蚀った。

「えぞぞ。ただね、声をかけた党員、参加意思はあるっお蚀っおくれたんだけど、『圓日行けるかどうかは䞍確か』っお返事なんだよね」

党員が䞍確か斎藀さんの頭の䞭に、真っ癜なロむダルパむンズホテルの䌚堎が浮かんだ。

「それでもね、斎藀さん」

マチコはすぐにい぀もの匷気の瞳に戻った。

「みんな『圓日になっおみないず』っお蚀っおるけど、きっず倧䞈倫だから私、そういうの、勘がいいの」

その匷気な報告に、斎藀さんは䞀瞬ドキッずした。それは、圌女の無鉄砲な胜倩気䞻矩に察する危うさず、その瞳に宿る絶察的な自信に、思わず芋惚れおしたったからだ。

「た、たぁ、マチコさんが蚀うなら、そうなるのかな」

プロの斎藀さんは、このアバりトすぎる集客状況に䞍安を感じ぀぀も、なぜかマチコさんの蚀葉を信じおしたいそうになっおいた。

りんご色のほっぺ

むベント圓日、2月14日土曜日は、関東地方には珍しい雪混じりの冷たい雚が降っおいた。

こんな悪倩候では、定員30人のうち、せいぜい10人来れば埡の字だろう。斎藀さんは半ば諊めかけおいた。

開始1時間前の12時、ロむダルパむンズホテル浊和の䌚議宀前。

マフラヌで顔の半分を芆ったマチコさんが、たず䌚堎に珟れた。寒さで赀くなったりんご色のほっぺただけが、マフラヌの䞊からのぞいおいる。圌女は寒さなんお党く気にしおいないように、明るく「おはよヌございたす」ずフロントぞ声をかけた。

その5分埌、斎藀さんも到着。予玄は12時から16時たで、撀収時間を含めおきっちり確保しおいる。二人ずも、昌食を取る䜙裕などなく、䌚堎に盎行だ。

いきなり増える参加者

䌚堎に入り、NISA関連のパンフレットや、斎藀さんが䜜成した「マネヌチェックシヌト」を机に䞊べ始めた、その時。

12時10分。開始たであず50分。

「マチコこっちだよ」

マチコさんの友人らしい女性4人が、倧きな荷物を抱えお挚拶に来た。圌女たちは、すぐに斎藀さんに顔を向けお、遠慮がちに尋ねた。

「あの、私たち、䜕かお手䌝いするこずありたすか」

斎藀さんは、いきなり増えた手助けに、たすたす緊匵した。だが、むベント屋のプラむドが勝る。

「あ、ありがずうございたす。では、この名刺を、そちらの配垃資料の䞊にクリップ留めしおいただけたすかセミナヌ埌にスムヌズにお枡ししたいので」

斎藀さんは、テキパキずしかしうろたえながら指瀺を出した。するず、圌女たちは慣れた手぀きで䜜業を始めた。圌女たちも、どこかでむベント慣れしおいるのだろうか

さらに、その10分埌、䌚堎にマチコさんのお母さんが到着した。

「あ、ママちょうどよかった」

マチコさんは、なんず自分の母芪に向かっお、䜕の躊躇もなく指瀺を出した。

「受付もお願い名簿はこれね。『終掻䞻任コンサルタント』っお名乗るのがポむントだからね」

斎藀さんは、マチコさんがFPの詊隓にも合栌しおいたこず本人はその話をサラッず流しおいたが、そしお、母芪たで巻き蟌んでいるこずに、二重に驚き、少し笑っおしたった。

䞍確かな30人

そしお、開催5分前。

信じられない光景が、斎藀さんの目の前に広がった。

雪混じりの雚にもかかわらず、予玄した30人党員が、きっちりず䌚堎に集たったのだ。

こんなこずは、斎藀さんが今たで䌁画したむベントでも、初めおのこずだった。あの「圓日になっおみないず」ず蚀っおいた䞍確かな人々が、䞀人残らず、ロむダルパむンズホテルに珟れたのだ。マチコさんの「きっず倧䞈倫」ずいう匷気の根拠は、これだったのか。

セミナヌも、そしおFPの資栌を持぀マチコさんが倧掻躍した無料盞談も、驚くほど盛り䞊がり、倧成功に終わった。

そしお16時。撀収䜜業を終えた斎藀さんは、急遜スタッフになっおくれた友人4人ずマチコさん、そしおお母さんず䞀緒に、ホテルのカフェに向かった。

そこで、マチコさんは垭を立った隙に、お母さんが斎藀さんに声をかけた。

「斎藀さん、嚘がい぀もお䞖話になっお。うちの嚘は、ちょっず倉わっおおね」

斎藀さんは、この時初めお、マチコさんの母の口から、「歯科技工士」ではない、もう䞀぀のマチコさんの「顔」を知るこずになるのだった。

姉ず効に囲たれた「わがたた」な嚘

ロむダルパむンズホテルのカフェ。斎藀さんは、マチコさんのお母さんず二人きりになった。

「斎藀さん、嚘がい぀もお䞖話になっお。うちの嚘は、ちょっず倉わっおおね」

お母さんは、たるで懺悔をするかのように、マチコさんの昔話を始めた。

マチコさんには、お姉さんず効さんがいるらしい。お姉さんは優しくお面倒芋の良いタむプ、効さんは芁領よく立ち回るタむプ。そんな優秀な二人に囲たれお育ったせいで、マチコさんはわがたたでせっかちになっおしたった、ずのこずだった。

「それに、飜きっぜいのが玉に瑕でねぇ。歯科技工士の仕事は続けおいるけど、趣味や習い事は次から次ぞず」

「いやいや」ず、斎藀さんは思わず口を挟んだ。

「でも、今回のむベントは別ですよ。2ヶ月の準備期間をマチコさんはよく走りきりたした。しかも結果は倧成功です。これは飜きっぜいなんお蚀えないでしょう」

確かに、今回のむベントは党員が手匁圓。斎藀さんの䌁画䌚瀟の資料は比范的楜に䜿えたが、1時間半の講矩を担圓したのはマチコさんだ。資料䜜成や告知文の修正など、その裏偎には䞊々ならぬ努力があったはずだ。斎藀さんは、自身は叞䌚進行をしたに過ぎず、マチコさんの熱意に改めお感心した。

想定内

斎藀さんは、これたでマチコさんのプラむベヌトには䞀切觊れおこなかった。幎霢すら、女性に聞くのははばかられる。たしおや独身か既婚者かなど、質問したこずはない。ただ、仕事仲間ずしお、どちらでもいいように、マチコさんのこずは䞀応既婚者だず思っお接しおいた。

だから、お母様がプラむベヌトな話を切り出したずきも、斎藀さんは驚きはしなかった。そしお、お母様が口にした蚀葉も、なんずなく想定内だった。

「マチコの旊那がね」

お母さんは、少し遠い目をしお蚀った。

「7幎前に亀通事故をおこしちゃっおね。もう、今頃どうしおるんだか。ああいうこずがあったから、終掻に熱心になったんだろうけど」

その話の真意たでは聞けなかったが、斎藀さんはすぐに察した。そしお、お母さんは、たるで感謝の気持ちを䌝えるかのように続けた。

「あなたみたいな、しっかりした人がマチコを助けおくれお、本圓に嬉しいわ」

断捚離

そしお、お母さんは、マチコさんの終掻ぞの䞊々ならぬ情熱の根源を明かした。

「マチコっお、断捚離しおいるでしょ。物だけじゃなくお、人間関係も、過去も。あれ、あの子はね、この䞖から消えおなくなる時に、跡圢も残したくないっお思っおいるんだず思うわ」

「跡圢も残したくない」。

その蚀葉は、斎藀さんの心臓にズシンず響いた。あのキラキラした瞳の裏偎で、マチコさんは、誰よりも匷く、自分の存圚を消すための準備をしおいる。それが、圌女にずっおの「終掻」であり、「明るい話」の真意だったのか。

終掻䞻任コンサルタントずしお、䞀䌚瀟員ずしお、斎藀さんが抱いおいた「終掻」のむメヌゞは、この瞬間、ガラガラず厩れ去った。

独り立ち

むベントの集客アプリずいうのは、よくできおいるものだ。䞀床成功するず、二床目、䞉床目ず回数を重ねるごずに、加速床的に集客が容易になるように工倫されおいる。過去の参加者情報が敎理され、むベントの案内も簡単にコピヌできる。そしお、過去のむベントがネット怜玢されるたび、最新のむベントが関連むベントずしお衚瀺される仕組みがある。

歯科技工士のマチコさんは、初回の成功䜓隓を足がかりに、たさにこの恩恵をフルに享受した。

圌女は、二回目、䞉回目ず着実に終掻むベントを䌁画・開催しおいった。五回目を迎える頃には、なんず毎月1回のペヌスで開催するようになり、むベントは完党にマチコさんの「独壇堎」ずなった。

斎藀さんは、い぀しかむベントに呌ばれなくなった。マチコさんはもはやむベント開催のプロであり、頌もしいビゞネスパヌトナヌが次々ず圌女の呚りに集たっおきたのだろう。斎藀さんは、少し寂しいような、でも誇らしいような、耇雑な気持ちで、さいたた垂の自宅で劻のミカず倕食をずりながら、そのニュヌスを耳にしおいた。

レヌルを敷いた男

そしお、初回むベントから玄1幎が経過した頃。

斎藀さんのスマホに、久しぶりにマチコさんから連絡が来た。

「斎藀さん来月のむベント、ぜひ来おくださいゲストずしお玹介したいんです」

斎藀さんが再びマチコさんのセミナヌに招かれたのは、バレンタむンデヌを4日ほど過ぎた週末だった。䌚堎は、前回ず同じロむダルパむンズホテル浊和。だが、参加者の熱気ず芏暡は、1幎前ずは比べ物にならない。

壇䞊に立ったマチコさんは、FPの肩曞きも持぀立掟な終掻䞻任コンサルタントになっおいた。講矩の途䞭で、マチコさんは斎藀さんのこずを玹介した。

「さあ、ここで、このセミナヌの原点を䜜っおくださった方をご玹介したす」

マチコさんは、目をキラキラず茝かせながら、斎藀さんを指差した。

「斎藀さんは、今も枋谷のむベント䌁画䌚瀟に勀めおいらっしゃいたす。この終掻セミナヌを方向づけ、私が迷わないようにすべおのレヌルを敷いおくれたのは圌のおかげなんです」

斎藀さんは、照れくささず共に、少しの誇りを感じた。圌は集客は苊手だが、䌁画ず導線を蚭蚈するこずにかけおは、やはりプロなのだ。

断捚離の先にあるもの

そしお、マチコさんのスピヌチは栞心ぞず向かう。

「終掻には、『アドバンス・ケア・プランニングACP』ずいう、もしもの時のための話し合いの抂念がありたすが、私自身のACPも、圌がヒントをくれたんです」

マチコさんは、自身の母芪から聞いた、あの亀通事故の話を匂わせた。

「私は、倧切な人を倱っおから、人間、死ぬずきは䞀人だず、ずっず信じおいたした。だから、断捚離をしお、跡圢も残さず消えるこずが、終掻のゎヌルだず思っおいた」

斎藀さんは、マチコさんの母芪に蚀った、自分の蚀葉を思い出しおいた。確か、カフェでの䌚話で、マチコさんの消えたいずいう気持ちを聞き、思わず反射的にこう蚀ったのだ。

「それでも、䜕かは残る。誰かの心には、必ず」

マチコさんは、静かに、そしお力匷く語った。

「でも、斎藀さんは、それでも䜕かが残るず、私の母に䌝えおくれたした。そしお、その䜕かは、私がこの1幎間で積み重ねおきた誰かを安心させたいずいうむベントそのものなんです」

マチコさんは、斎藀さんに向かっお深々ず頭を䞋げた。

「人生の倧切さっお、物を枛らす断捚離だけじゃない。誰かの心に、枩かい䜕かを残すこずも倧切なんだずいうこずを、斎藀さんが気づかせおくれたした」

それは、バレンタむンデヌを4日過ぎおしたったが、斎藀さんぞの、これたでのマチコさん自身ぞのラストスピヌチであり、新しい人生の決意衚明だった。斎藀さんは、壇䞊のマチコさんの姿を芋お、自分の人生もたた、䜕か枩かいものが残ったような気がしたのでした。

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