
みなさん、こんにちは。いつもの物語をお読みいただきありがとうございます。賑やかな物語を綴っているこのブログですが、今日はスピンオフ企画です。ミクの夫:ノリオの胸の内にある一番大切なものについてお話しさせてください。実は、あの物語のヒロインであるミクが、少しばかり無理がたたって、地方の有名な病院へチェックインしてしまったのです。
まさかの新ネタかと思いきや
「ちょっと入院することになったの」
電話越しにその声を聞いたとき、出張中のノリオは正直に言いました。
「え、それ来年のエイプリルフール用の新ネタ?」
なにしろ、3日前の4月1日にあんなに面白いほど信じてしまったジョーク「明日は寒くなって大雪になるそうよ…( ^ω^)うそだよーん」を聞いたばかりだったし、何よりいつだって疲労と多忙をきらめきに変えて走り抜けていくようなミクだったから。
でも、今回はネタではありませんでした。
ミクは、不思議な人間です。
特定の宗教に熱心なわけでもないけれど、彼女の思考はとても慈愛に満ちていて、どこかキリスト教的でもあり仏教的でもある。
老舗のお茶屋さんの魂を受け継いだような凛とした潔さがある。
そんな生まれつきの性格を持ったミクが、もろい肉体という器を持って、一生懸命に生き急いできた。
その姿が、ノリオ自身の道を照らす希望の星だったことに、今さらながらノリオも気づかされたのでした。
ノリオ、胸キュンが切れる前に
今、ノリオの心はぽっかりと穴が開いたみたいです。
なにしろ、まだまだ夫婦でやりたいことが山積みだったのですから!
やっと家庭も落ち着いて、深い話ができるようになったのに。
やっと夫婦で気持ちをつなげるようになったのに。
これからお互いの空き時間にコーヒー教室に行って、お互いこだわりを語り合いたかったのに。
日頃の疲れを癒やしてあげたかったのに。
いっしょに散歩するとき、ピョコピョコと飛ぶように歩くミクの後ろ姿。
自販機の前で、何を選ぶか迷いながらキラキラ輝いていたミクの瞳。
クリスマスの赤いコートにブーツのコスチューム。あの紺色のワンピース。
思い出すだけでノリオは胸キュンして、心拍数がバグりそうでした。
あのクリスマスライトツアーで、じんわりと振り向いてくれたときの仕草なんて
夫:ノリオにとって、一生モノの宝物なのでした。
これからの作戦
「いい妻だった」なんて、ノリオは過去形で語る言葉を一文字も使いたくありませんでした。
恐怖がすぐ隣に座っているような夜もありますが、ノリオはもう決めていました。
ミクはノリオにとってのたからものです。
きっとすぐに回復するでしょうけれど、もし、もし少し時間がかかったとしても大丈夫。
ノリオが退院したミクを、なにがあっても引き取ります。
ミクが、これまで忙しすぎて体験できなかった世の中のしあわせを
これからはミクと一緒に、全部、回収しに行く決心をノリオはしたのでした。
今夜、こんなに熱いことを考えているノリオでしたが、明日の朝には
「うわ、恥ずかしい!」
と、赤面しているかもしれません。
でも、いいんです。これが今の、偽らざるノリオの気持ちなんですから。
ミク、病院の白いシーツの上で退屈しないか?
次に面会するときは、とびきりのコーヒーにあうチョコレートを準備してもっていくよ。
だから、ゆっくり、でも確実に、オレの元へ帰ってきてくれ。








