「声かけを変えたら、世界がちょっと優しくなった」ミクが声かけ改革を始めてから数週間。家の空気は、前よりずっと軽くなった。でも、もちろん毎日が順調というわけではない。
朝の戦いは、まだ続いていた
ある朝。
ケンタはランドセルを背負ったまま、なぜか靴下を手にはめていた。
タツキはタツキで、鏡の前で「今日の前髪の角度」を研究している。
ミクは思わず言いそうになった。
「早くしなさい!」
でも、深呼吸して言い換えた。
「ケンタ、あと何分で出発できそう?」
ケンタは靴下を手から外しながら言った。
「んー、5分!」
タツキは鏡越しに答える。
「ぼくは3分!」
ミクは笑った。
「じゃあ、タイマー鳴ったらよーいドンね」
タイマーが鳴ると、二人は競争するように玄関へ走った。
ミクは心の中で拍手した。
自分で決めると、子どもはちゃんと動く。
ケンタのポケットジョークが炸裂する
登校前、ケンタが突然言った。
「ママ、昨日学校で習ったんよ。
犬は1ぴき2ひき、うさぎは1わ2わ、車は1だい2だい、
そして、ママは1にん2にん!」
タツキがすかさず突っ込む。
「ママは1かあちゃん2かあちゃんじゃろ!」
ミクは吹き出した。
「そんなに増えたら大変よ!」
ケンタは得意げに言う。
「じゃあ、ママは1えらい2えらいで数えるんよ」
ミクは思わず胸が熱くなる。
子どもって、こうやって親を励ます天才だ。
ミクの自分への声かけが変わり始める
その日の夕方。
ミクは洗濯物をたたみながら、ふと昔の自分を思い出した。
「私の言い方が悪いんだ」
「ちゃんとできないのは私のせいだ」
そうやって、自分を責めてばかりだった。
でも今は違う。
「3人ぶん声かけてるだけで、合格」
そう思えるようになってきた。
ミクは自分にそっと言った。
「今日もよくやったね、ミク」
その瞬間、肩の力がふっと抜けた。
夜のお風呂ミッションは、ゲーム化へ
夜。
タツキがまた床にぺたんと座り込んで動かない。
ミクは言いそうになった。
「まだ入ってないの?」
でも、言い換えた。
「もうズボン脱げてるじゃん。あと一歩だね」
タツキは照れたように笑い、立ち上がる。
「じゃあ、ぼく先に入る!」
ケンタも続く。
「お風呂のあと、何して遊ぶ?」
ミクは答える。
「今日は数え方クイズ大会しようか」
二人は一気にテンションが上がり、
競争するように浴室へ走っていった。
ミクは気づく。変わったのは子どもだけじゃない
湯船につかりながら、ミクは思った。
「声かけを変えたら、子どもが動くようになった。
でも一番変わったのは、私の心かもしれない」
怒る回数が減った。
責める言葉が減った。
そのぶん、笑う時間が増えた。
ミクはそっとつぶやく。
「今日も3人回した。これだけで満点だね」
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