高血圧の原因になる塩分をいかに減らすか、若いうちから心がけておくと良い習慣があります。今回はそのことについて、物語の中でお伝えいたします。その第4回目(最終回)です。
納豆
朝。雄大は、昨日買ったアボカドを切りながら(まだ上手く切れない)、「今日は何が来るんだ」と覚悟していた。スマホが震えた。
差出人:ルミ
件名:【カリウム講座④:納豆の逆襲】
(来た)
開くと、こう書かれていた。
《カリウム講座④:納豆の逆襲》
雄大さん、ほうれん草クリアしたね。でもね、カリウムは発酵食品から摂ると吸収が良くなるよ。今日の主役は納豆。納豆1パック→バナナ1本分のカリウム。しかも、
- 塩分ゼロ
- 腸内環境が整う
- 血圧にも良い
- 営業マンの朝に最適
《今日のミッション:納豆をどこかのタイミングで食べること ♡塩分番長ルミ》
雄大は震えた。(納豆、車で食べるのは無理。匂いが営業車に残る)
ユリが横で言った。
「雄大、朝ごはんに食べればいいよ」
(夫婦で俺を管理してる?)
雄大は朝食に納豆を食べることにした。しかし、タレの袋が破裂した。
雄大「ぎゃああああああ!」
ユリ「どうしたん!?」
雄大「タレがタレが!」
テーブルに飛び散る納豆タレ。床にも飛ぶ。雄大のシャツにも飛ぶ。ユリは笑いながらタオルを持ってきた。
「雄大、納豆初心者か?」
「初心者だよ!」
ユリは優しく言った。
「大丈夫。納豆は慣れだから」
(俺、何の修行してるんだ?)
出勤途中。雄大は車に乗り込んだ瞬間、気づいた。(納豆の匂い残ってる)窓を開ける。(まだ残ってる)エアコンを強風にする。(まだ)そのとき、スマホが震えた。
差出人:ルミ
《雄大さん、納豆食べた?》
(なんでわかるんだよ!?)
雄大は返信した。
《食べました。タレが爆発しました》
すぐに返事が来た。
《初心者あるある♡》
(なんで俺、看護師に納豆の報告してんだ?)
午後。営業所に戻ると、三浦と田中がホワイトボードの前に立っていた。
三浦「雄大、今日のカリウムどうだ?」
雄大「納豆食べた。タレ爆発した」
田中「爆発!?」
三浦「納豆は危険だからな」
雄大「危険なの!?」
三浦「よし、今日から健康戦隊を名乗ろう」
雄大「なんで!?」
田中がホワイトボードに書いた。
《健康戦隊・ケンコウレンジャー》
- レッド(減塩担当)→三浦
- グリーン(カリウム担当)→田中
- イエロー(塩分まみれ担当)→雄大
雄大「なんで俺だけ、塩分まみれ担当なの!?」
三浦「だってお前、のり塩3袋食べるし」
田中「カップ麺も好きだし」
雄大「過去の俺を掘り返すな!」
三浦「雄大、今日からイエローとして頑張れ」
雄大「嫌だよ!」
夜。雄大が帰宅すると、ユリが夕食を作っていた。
- 減塩味噌汁
- ほうれん草のおひたし
- 鶏むね肉の照り焼き(減塩)
- 納豆(予備)
雄大は言った。
「ユリ俺、今日健康戦隊にされた」
ユリは吹き出した。
「なにそれ」
雄大「俺、イエロー。塩分まみれ担当」
ユリは笑いながら言った。
「雄大、実はね、私も昔、塩分まみれだったんよ」
雄大「え?」
ユリは照れながら続けた。
「看護師になりたての頃、夜勤のたびにカップ麺食べてて、先輩に塩分の妖怪って呼ばれてた」
雄大「妖怪!?」
ユリ「だからね、雄大の気持ちわかるんよ。急に全部変えるのは無理。でも、少しずつなら変われる」
雄大は胸が熱くなった。
(ユリ。俺、頑張るよ)
そのとき、スマホが震えた。差出人:ルミ。
《雄大さん、今日の納豆の写真まだ?♡》
雄大は空を見上げた。(なんとかなるよな)長岡の夜は、静かに更けていった。
じゃがいも
朝。雄大は、昨日の納豆事件を思い出しながら朝食を食べていた。(今日は何が来るんだ)スマホが震えた。差出人:ルミ。
件名:【カリウム講座⑤:じゃがいもの覚醒】
(来た)
開くと、こう書かれていた。
《カリウム講座⑤:じゃがいもの覚醒》雄大さん、納豆クリアしたね。でもね、カリウムは加熱しても減りにくい食材が便利。今日の主役はじゃがいも。じゃがいも1個→バナナ2本分のカリウム。しかも、
- 塩分を外に出す
- 腹持ちがいい
- 疲れにくくなる
- 営業マンの昼に最適
- 皮むけば車でも食べられる(※推奨はしない)
《今日のミッション:じゃがいもをなんらかの形で食べること ♡塩分番長ルミ》
雄大は震えた。(なんらかの形?ポテトチップスはダメだよな。フライドポテトもダメだよな)
ユリが横で言った。
「雄大、じゃがいもは茹でるだけでいいよ」
(夫婦で俺を育ててる)
昼前。雄大は千葉のショッピングモール近くで営業車を停めた。(じゃがいも、じゃがいも)
しかし、周囲にあるのは、
- マクドナルド
- ケンタッキー
- ファストフード3軒
- コンビニ
(ポテトの誘惑が強すぎる)
雄大は震えながらマクドナルドの前を通り過ぎた。
(フライドポテトはじゃがいもだけど、塩分が!)
そのとき、スマホが震えた。差出人:ルミ。
《雄大さん、フライドポテトはじゃがいも扱いしないからね♡》
(なんでわかるんだよ!?)雄大は空を見上げた。(俺、監視されてる?)
雄大はコンビニに入った。(じゃがいも、じゃがいも)しかし、じゃがいも系の食品は、
- ポテトサラダ(塩分1.5g)
- 肉じゃが(塩分2.0g)
- フライドポテト(塩分1.8g)
- じゃがバター(塩分1.3g)
(全部塩分!)雄大は震えながら、「蒸しじゃが(塩なし)」を見つけた。(これだ!)しかし、最後の1個だった。雄大が手を伸ばした瞬間、隣のサラリーマンも手を伸ばした。
二人「!」
雄大(心の声)
(譲るべきか?いや、俺にはミッションが!)
サラリーマン「どうぞ」
雄大「えっ、いいんですか?」
サラリーマン「僕、ポテサラでいいんで」
雄大「ありがとうございます!」
雄大は蒸しじゃがを抱きしめた。
(俺、じゃがいもに感謝する日が来るとは)
午後。営業所に戻ると、三浦と田中が待ち構えていた。
三浦「雄大、今日のカリウムどうだ?」
雄大「蒸しじゃが最後の1個」
田中「おお!じゃがいもは強いぞ!」
三浦「よし、今日からホントに健康戦隊ケンコウレンジャーを結成する」
雄大「なんで!?」
三浦がホワイトボードに書いた。
《健康戦隊ケンコウレンジャー(正式)》
- レッド(減塩担当)→三浦
- グリーン(カリウム担当)→田中
- イエロー(塩分まみれ担当)→雄大
- ピンク(医療監修)→ユリ
- ブラック(塩分の死神)→ルミ
雄大「ブラック怖すぎるだろ!」
田中「ブラックは必要だよ。締まるから」
雄大「締まるって何!?」
三浦「雄大、今日からイエローとして頑張れ」
雄大「嫌だよ!」
夜。雄大が帰宅すると、ユリが夕食を作っていた。
- 減塩味噌汁
- 蒸しじゃが(バターなし)
- 鶏むね肉のソテー
- トマトサラダ(カリウム)
ユリは言った。
「雄大、今日も頑張ったね」
雄大「ありがとう」
ユリは少し照れながら言った。
「雄大、来月ね、一緒に減塩料理教室行かない?」
雄大「え?」
ユリ「病院の栄養士さんがやってるやつ。夫婦で参加する人多いんよ」
雄大は胸が熱くなった。
(ユリ。俺のために)
ユリは続けた。
「雄大が頑張ってるから、私も一緒に頑張りたいんよ」
雄大は深くうなずいた。
「行くよ。一緒に行こう」
そのとき、スマホが震えた。差出人:ルミ。
《雄大さん、今日のじゃがいもの写真まだ?♡》
雄大は空を見上げた。(なんとかなるよな)長岡の夜は、静かに更けていった。
トマト
朝。雄大は、昨日のじゃがいもミッションを思い出しながら、「今日は最終回なんだろうな」と覚悟していた。スマホが震えた。差出人:ルミ。件名:【カリウム講座⑥:トマトの覚醒】
(来た、最後の講座)開くと、こう書かれていた。
《カリウム講座⑥:トマトの覚醒》
雄大さん、ここまでよく頑張ったね。今日の主役はトマト。トマト1個→バナナ1本分のカリウム。しかも、
- 塩分を外に出す
- 血圧を下げる
- ビタミンCで疲れにくくなる
- どこでも食べられる(営業マン向け)
《今日のミッション:トマトを誰かと一緒に食べること ♡塩分番長ルミ》
雄大は首をかしげた。(誰かと一緒に?なんで最後だけそんな条件?)ユリが横で言った。
「雄大、今日の夜、料理教室だよ」
(あ、そうだった)
夕方。雄大とユリは、病院の栄養指導室に来ていた。参加者は夫婦が多く、みんなエプロン姿で楽しそうにしている。講師の栄養士が言った。
「今日は減塩でも美味しい料理を作ります。テーマはトマトです!」
雄大(心の声:トマト!今日のミッション!)
ユリが笑った。
「雄大、運命だね」
(いや、運命って)
料理が始まった。
- 減塩トマトスープ
- トマトとアボカドのサラダ
- 鶏むね肉のトマト煮
雄大は不器用ながらも頑張った。しかし、トマトを切った瞬間、まな板から転がり落ちた。
コロコロコロ。
雄大「うわあああああ!」
ユリ「雄大、追って!」
雄大は転がるトマトを追いかけ、参加者たちが笑いながら見守った。
講師「大丈夫ですよ〜、トマトは逃げませんから」
雄大「逃げてますよ!」
ユリは笑いながら言った。
「雄大、こういうとこ好きよ」
雄大は照れた。(俺、何してんだ)
料理教室の終盤。突然、ドアが開いた。
三浦「雄大ー!来たぞー!」
田中「イエローの応援に来た!」
雄大「なんで来たの!?」
三浦「ユリさんから聞いた。今日、雄大が料理教室に挑戦しますって」
田中「だから俺たちも来た!」
講師「え、えっと参加者の方ですか?」
三浦「はい!レッドです!」
田中「グリーンです!」
雄大「言うなぁぁぁ!」
ユリは笑いながら言った。
「先生、この人たち、雄大の健康仲間なんです」
講師は微笑んだ。
「素敵ですね。仲間がいると続けやすいですよ」
三浦と田中は胸を張った。
「雄大、俺たちがついてるぞ!」
雄大は照れながら言った。
「ありがとう」
料理が完成し、みんなで試食する時間になった。そのとき、雄大のスマホが震えた。差出人:ルミ 件名:【最後のメッセージ】。雄大はそっと開いた。
《雄大さんへ》
今日で講座は最後にします。あなたは、
- ラーメンスープを残せるようになった
- 外食で塩分を気にするようになった
- カリウムを毎日摂れるようになった
- ユリさんと一緒に料理教室に来た
全部、すごいことだよ。雄大さん、あなたはもう塩分まみれの人じゃない。これからは、ユリさんと一緒に、ゆっくり健康になっていけばいい。私は、その背中をちょっと押しただけ。塩分番長ルミより
雄大は、胸の奥がじんわり熱くなるのを感じた。
(ルミさん、ありがとう)
ユリが隣で言った。
「雄大、泣いてるの?」
「泣いてない、汗だよ」
「室内なのに?」
「汗だよ」
ユリはそっと雄大の手を握った。
「雄大、これからも一緒に頑張ろうね」
雄大は深くうなずいた。
「うん。ユリと一緒なら、なんとかなるよ」
料理教室の帰り道。雄大はユリと並んで歩きながら思った。
(塩分との戦いは終わらない。でも、もう怖くない。ユリがいて、仲間がいて、そしてルミがいたから)
ユリが言った。
「雄大、今日のトマト美味しかったね」
雄大は笑った。
「うん。これからも一緒に食べような」
長岡の夜風が、二人の間を優しく通り抜けていった。

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