子育て

角屋

今治市の城下町風情が残る一角に、代々続く蕎麦屋:角屋(かどや)はある。「はい、お待たせしました! ざる蕎麦二つと、焼豚玉子飯(やきぶたたまごめし)一丁です!」お昼時の店内に、弥生(22)のきびきびとした声が響く。ここでホール係として働き始め...
仕事

長岡の風⑦

長岡駅前のベンチ。信介は缶コーヒーを開け、空を見上げていた。「さて、今日もなんとかなるわ」すると、ゆっくりと杖をついた男性が近づいてきた。70代後半、背筋は伸びているが、どこか寂しげな表情。迷う営業マン「すまん。あんたがなんとかなるおじさん...
仕事

長岡の風⑥

長岡駅前のベンチ。信介は缶コーヒーを開け、空を見上げていた。「さて。今日もなんとかなるわ」すると、スーツ姿の男性がふらふらと近づいてきた。40代半ば、ネクタイが曲がり、目の下にはクマ。どう見ても疲れ切った会社員だ。営業マンに聞く仕事に疲れた...
仕事

長岡の風⑤

信介のゆるい人生相談室をお届けいたします。長岡市のゆるい空気と信介のゆるさが相談者の気持ちを自然に溶かしていく(?)様子をお楽しみください。営業マンの定位置信介はいつものように缶コーヒーを開け、空を見上げていた。「さて。今日もなんとかなるわ...
仕事

長岡の風④

部屋が驚くほどスッキリした。信介は思った。(物を捨てると、心も軽くなるんだな)。恵子が言った。「信介、いい顔してるよ」「抜けてる顔か?」「抜けてるけど、いい顔よ」信介は笑った。「まあ、なんとかなるわ」ゆるく生きる、営業マンある日の夕方。信介...
仕事

長岡の風③

信介は静かに頷いた。(そうだな。人生は戦いじゃなくて、楽しむものだ)長岡の夜風が、信介の肩の力をそっと抜いていった。営業マンに恋愛相談をしてみるある日の夕方。信介が悠々と長岡駅前のベンチで缶コーヒーを飲んでいると、美咲がまた走ってきた。「パ...
仕事

長岡の風②

信介は、頑張った。誰よりも頑張った。頑張り方がわからないときは、もっと頑張った。その結果、60歳になって気づいた。(あれ、俺、疲れてる?)長岡駅前のベンチに腰を下ろし、信介は缶コーヒーを開けた。「頑張るのも大事だけどよ抜き方も大事なんだよな...
仕事

長岡の風①

新潟県長岡市。信介は60歳を過ぎた今も、毎朝6時に起きて散歩をする。「頑張ることは大事だぞ。夢を持て。努力しろ」子どもの頃から耳にタコができるほど言われてきた言葉。父も母も、教師も、近所の大人も、みんな同じことを言った。営業的考えを持った仲...
子育て

タクシー

三重県津市。日本一短い名前の市として知られるこの街で、時田剛(ときたつよし・37)は今日もタクシー会社の無線室にいた。「はい、時田です。津駅東口に1台ですね、5分で向かわせます」元気がない人への営業手法ひっきりなしに鳴り響く電話を受け流し、...
子育て

過干渉

長野県須坂市。山々に囲まれたこの街の片隅に、毎朝4時半にアラームと格闘する男がいた。池田吾郎(37)。仕事はシステムエンジニア。勤務先はなんと片道2時間かかる場所にある。それだけでも白目をむきそうなスケジュールなのだが、現在の吾郎にはもう一...
子育て

聞いてるつもり⑤

澄江と隆の出会いの物語。これは、聞いてるつもり物語の根っこになっている部分でした。澄江が、聞く達人になる前、まだ若くて、まだ不器用で、まだ誰かに聞いてほしいだけの女の子だった頃。そして、隆もまた、寡黙で不器用で、でも心の奥には誰にも言えない...
子育て

聞いてるつもり④

澄江が二十代で結婚した頃、夫の隆は、今と同じように寡黙な人だった。仕事から帰ってくると、靴を脱ぎ、黙って風呂に入り、夕飯を食べ、テレビをつけ、酒を飲む。その一連の動作に、ほとんど言葉はなかった。寡黙な夫に対する営業手法澄江は最初、それを大人...